社内でじわじわ存在感、“となりのお節介おじさん・おばさん”の底力。サントリーが育てる「愛のあるお節介」、組織に息づく支え合いの文化

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内容は、相手の話を聞く力を磨く「傾聴」についてや、「解決志向アプローチ」を学ぶというもの。これらのスキルを身に付ければ、活動の内容についてはTOOメンバーそれぞれに任せることとした。すると、TOO自らがそれぞれの場に合ったやり方を考えて活動を行うようになっていった。

2025年6月現在、グループ会社全体でTOOメンバーは食品部門10人、酒類部門9人の合計19人。キャリアサポート室の講習を終えて各地で活動を行っている。仕事としての割合は部署やエリアによって多少違うが、だいたい現場業務6割、TOO活動4割がベースになっているという。

ミドル世代の悩みも浮き彫りに

TOOメンバーに選ばれて10年、TOOベテランのサントリーフーズ株式会社東北支社・第二支店の嶋村雄一さんの所には信頼関係がなくてはなかなか相談しにくい給与についてのお悩みも寄せられるようになっている。

嶋村さんが行っている主なTOO活動は面談。あまり知らない「おじさん社員」に面談をされてもなかなか話してはくれない。嶋村さんはなるべくいろいろな人に声をかけるように普段から心がけているという。

「おてんとさん」と評されるだけあって、嶋村さんにはどことなく、人を包み込む暖かい雰囲気がある。上司ではないため、評価を気にすることなく話せるというのもTOOの良さだろう。

かといって、まったく権限がないわけでもない。支社長直轄、しかも支社長よりもベテラン社員という立場でもあるため、改善が必要と感じれば支社長に直談判も可能なのだ。

嶋村さんは自分の活動を「雑談の延長のようなこと」と言うが、そんな気楽な面談だからこそ本音がポロリと出てくるのだろう。

嶋村さん
社員と雑談する嶋村さん(左)。始終和やかな時間が流れている(写真:サントリー提供)

「最近多い相談は?」と尋ねると「待遇のことかな。同じ仕事をしていても、正社員とパートナー社員(正社員ではない無期雇用で働く社員)とでは給料や家賃補助の制度などに違いがあるので、そのあたりの相談というか、愚痴というか……そういう話ですかね」と嶋村さん。

この手の相談のときには、会社として徐々に待遇改善に向けて動いていることなどを伝えているのだという。

意外にも、不安感が強いのは新人よりもある程度年齢のいった中堅層の人たちだという。

「新しいチャネルに移動してきた人とか、違う仕事をしていたけれども今回から新しいことをするようになったという人たちなどです。転勤で生活の場が変わり、加えて仕事も新しい。

結構、年齢を重ねているから、 周りからは『わかるよね』という扱いを受けてしまう。初めてのことでも、中堅になってきているとなかなか後輩にも聞きにくい。案外、難しい立場なんですよ」(嶋村さん)

こういう社員の相談を受け止めてアドバイスするのもTOO嶋村さんの役割だ。

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