コーランには本当は何が書かれていたのか

全米図書賞ノミネートの注目の書を読む

しかしカーラとアクラムの旅からは、それとは別の観点が浮かび上がってくる。むしろ、後世に持ち込まれた習慣と、文脈をないがしろにした恣意的な読み方とが、コーランの精神をゆがめているのではないだろうか? コーランの精神によれば、男女の別なく、良く生きるために服従すべきは、ただアッラーのみなのではないか? 本書の後半では、いわゆる「女性章」だけでなく、今日争点となっているいくつかのテーマについて、それぞれ一章を割いて、啓示が下ったときの文脈が丹念に掘り下げられていく。

二人の対話によって変化したのは、カーラ(と読者である私)だけではない。アクラムもまた対話を通じて変化する。たとえばアクラムは最初、現代においてさえ幼児結婚を擁護していた。けれども深い内省と文献調査をするなかで、彼は意見を変え、幼児結婚を否定するに至るのである。これは彼の立場としてはたいへんに勇気のいることのように思われる。しかしアクラムにとって、意見を変えたことは敗北ではない。9000人の女性学者を発掘したのと同じように、むしろ理解の深まりなのだ。

「自分が信者のまま死ぬことができますように」

カーラはある局面で、「では、あなたはまったく(神の存在に)疑いを抱いたことはないの?」と問いかけた。それに対してアクラムは、「疑いを抱いたことなどありませんよ、存在するものは存在するのです」などと笑止したりはしない。彼は口ごもりながら、「ときどき本当に怖くなるときがあります」と答える。そして、いつも礼拝のたびに、祈りをひとつ付け加えているのだと教えてくれる。自分が信者のまま死ぬことができますようにと、祈っているというのである。そう語るアクラムの誠実さに、私は胸を打たれた。

本書は、カーラがコーランに心酔してイスラム教徒になるという話でもなければ、アクラムがアッラーの存在に疑問を感じて信仰を捨てるという話でもない。そうであったなら、むしろ話は簡単だったろう。本当に難しいのは、自分のものとは異なる思考の枠組みを捉えようとすることであり、自分のよって立つ足場を揺るがすような対話に向き合うことなのだ。

本書のエッセンスを、「カーラとアクラムの友情の物語」とまとめてしまったのでは、甘ったるく聞こえるだろうか? しかし、この旅を可能にしたのが、二人の友情であるのは間違いない。そしてそんな友情こそが、未来への希望だと思うのである。

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