コーランには本当は何が書かれていたのか

全米図書賞ノミネートの注目の書を読む

コーランには、「男女は完全に平等」と書かれていた!?(写真 : AP/アフロ)
アメリカで刊行されたもっとも優れたノンフィクションを選ぶ全米図書賞のノンフィクション部門の候補作品が10月14日に発表された。11月18日に受賞作1冊が決まることになるが、候補に残った1冊に、日本でも9月に刊行された『コーランには本当は何が書かれていたか?』(カーラ・パワー著 秋山淑子)がある。
女性はベールを被らなくてはいけない。女性は教育をうけてはいけない。幼児結婚は推奨される。こうしたことは実はまったくコーランには書かれておらず、むしろ「男女は完全に平等だと書かれている」と説くこの話題の書を、翻訳家青木薫が感動的に読み解く。

 

2001年に起きた、いわゆる9.11のアメリカ同時多発テロからしばらく経った頃のこと、わが家に、日本在住のイスラム教徒およびイスラム学者の有志から一通の手紙が届いた。

当時、アメリカはもとより世界中で、「文明の衝突」が声高に叫ばれ、イスラム教徒は十把一絡げにテロリスト予備軍扱いされるような差別の嵐が吹き荒れていた。そんな状況を憂えるその手紙を、私は共感しつつ読み進めていった。

だめじゃん、日本のイスラム学者!

『コーランには本当は何が書かれていたか?』(文藝春秋刊)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ところが、さりげなさを装うかのように書き込まれていた一文に、私は目をむいた。手紙の終盤近くに、「イスラム教は本当は女性を大切にする宗教なのです」と書いてあったのだ。これが私には許せなかった。

私もつまみ読み程度ながら、コーランをめくったことはある。だから、コーランによれば、アッラーは女を男より劣ったものとして作ったことや、諸々の不平等な規定があることや、言うことを聞かない女には暴力を振るってもよいと書いてあることぐらいは、実際に自分の目で見て知っているのだ。

有志だという人たちは、イスラム世界の外に向かって、「本当は女性を大切にする宗教」だなどと、生ぬるいことを言ってる暇があったら、イスラム世界の中に向かって、「女性を所有物(財産)としてではなく、対等の人間として尊重しましょう」と言ってみろ、と私はいきり立った。そして、「だめじゃん、日本のイスラム学者!」とばかり、その手紙を放り出してしまったのである。

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