ゴーガンとジョブズに共通する現実歪曲。熱狂をもたらす「内的必然性」とは?
今日私たちが目にする多くのプレゼンテーション手法は、ジョブズの影響を色濃く受けています。しかしながら、仮にジョブズのプレゼンを真似してもユーザーに「熱狂」は伝わりません。
ジョブズが現実歪曲させるほど熱狂し、受け手の熱狂をも引き出した。その源泉にあるのは、「内的必然性」です。
「熱狂」は、現実すら歪める
内的必然性(inner necessity)とは、カンディンスキーが自身のアート作品を創るうえで中心に据えた概念です。彼のさまざまな言説からひもといた筆者なりの内的必然性を整理するとこうなります。
内的必然性とは、内面から湧き出るイメージとそれを外面に表現しなければならないと感じる衝動のこと。アーティストが描いた作品は、自分の内面を鑑賞者に伝え心を動かすものでなければならない。
カンディンスキーは、目に見える世界を再現する具象絵画ではなく、内面の衝動や精神の響きを表現するために抽象絵画へと踏み出した開拓者でした。だからこそ、創作の理由が必要となります。「なぜ作品を描くのか?」という根本的な問いに向き合わざるをえず、最終的に「内的必然性」という境地に至ったのです。
この内的必然性がなければ、彼の作品は単なる気まぐれな線や色の集合にすぎず、最悪の場合、ネクタイやカーテンの模様と区別がつかないものになってしまいます。
そこで、「描かずにはいられない理由」が内にあるかという内的必然性を拠り所にしてアート作品か否かを判断したのです。アートマインドセットにおいて、内的必然性とそれがもたらす「熱狂」は最も重要な概念です。
3つの内的必然性が、全リソースを作品に注ぎ込む原動力
カンディンスキーの考える「内的必然性」は、さらに3つに分類できます。筆者はこれを「内的必然性の3A」と名づけました。
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