ゴーガンとジョブズに共通する現実歪曲。熱狂をもたらす「内的必然性」とは?

アートマインドセットの概念は、ビジネスにおいても転写できます。
ビジョナリーなメーカーの内から湧き出る「熱狂」は、その「感覚」を通して「プロダクト」となります。その後「プロダクト」を知ったユーザーは、自身の「感覚」を通じて「プロダクト」から何かを感じ取り、メーカーについて深く探求し「熱狂」を追体験することになります。まず創り手の熱狂ありきで、結果、ユーザーも熱狂する。
この創り手の熱狂は、しばしば創造への衝動へとつながり、結果として現実そのものを書き換えてしまうことすらあります。
聴衆を魅了したスティーブ・ジョブズの「熱狂」
その代表格が、スティーブ・ジョブズです。
アップルコンピュータ(当時)が1984年にリリースしたマッキントッシュは、製作過程において納期やテクノロジーの面でもはや実現が危ぶまれていました。しかし、ジョブズは熱狂的にあたかもそれが実現できるかのように説明して回りました。従業員は彼の言葉を信じて、その熱狂に巻き込まれたのです。
当時のアップルコンピュータの副社長であるバド・トリブルは、テレビドラマ「スター・トレック」で使われた「現実歪曲フィールド(Reality Distortion Field)」という言葉を引用して、こう語りました。
「彼の前では、現実は変幻自在だ。彼は誰にでも事実上何でも納得させることができる」
この現実歪曲フィールドは、ユーザー側にも波及します。「プロダクトを通して、世界はどう変わるか」という彼のプレゼンテーションに込められた「熱狂」に聴衆は魅了されたのです。
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