20周年の「ルルとララ」、人気作家あんびるやすこさん「親が買い渋るものより、親子で買いたくなる児童書を」。シニアにもおすすめの理由

児童書作りに会社員時代の経験が役立った
児童書の作家になる前、私は2つの業界での勤務を経験しました。初めはTVアニメーションの背景美術スタジオ、そこから転職した先は、玩具やTVドラマ作品の企画やデザインを請け負うブレーン会社です。
背景美術スタジオでは、30分番組のシナリオを読んで、そこに登場するお部屋や小物の絵をデザインするという仕事でした。
毎週シナリオや絵コンテが送られてくるので、それを読むことが、未就学児や就学前半の児童たちが、どの程度のエピソードを理解できるか、どの程度の言葉づかいなら理解できるかなどを知る機会になりました。
毎週そういうプロットを見ていましたから、これがいまの仕事に生きているのかもしれません。30分番組ってちょうど児童書にぴったりのボリュームなんですよ。
ブレーン会社では、ドールフィギュアの服のデザインもしました。そのときに、「今、女の子たちの間で何が流行っているのか」を徹底的に頭に叩きこみました。当時は、子どもの好きな色や、放課後はどう過ごしているのかなど、いろんなリサーチをしていましたね。
そのころから絵本の創作をはじめていました。
絵が好きで、許されることなら絵だけを描いていたかったのですが、経済的にそれが許される状況ではありませんでしたから、サラリーマンとの二足のわらじ状態です。
一般的な会社よりも自由がきくのはありがたかったのですが、ブレーン会社は残業が多くて、終電後にタクシーで家に帰ってくる日々でした。帰宅後や土日に絵本を描いていたので、周りからは「大丈夫? 倒れてしまうよ」と心配されました。でも私は絵の仕事ができることが嬉しかったんです。
私がはじめて児童書の読み物を書いたのは、岩崎書店の「なんでも魔女商会」シリーズでした。それまで絵本は描いていたのだけれど、もうちょっと長い文章を書いてみたいと思ったんです。
絵本はどうしても少ないページで、簡潔に言葉をそぎ落として作っていきます。登場人物の人となりや深い葛藤などは、あまり書けませんでした。
挿絵として、モノクロだけれど子どもたちがきれいで楽しそうと思えるものを描きたい、とも思っていました。
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