思わず「へえ~」と感心してしまう”宗教と地理”の関係 壮大な「北欧神話」は過酷な自然環境が生んだ!
海が単なる交通路や生業の場である以上に、冒険と恐怖、未知との対峙を象徴する存在であったからこそ、北欧神話には荒海を舞台とした怪物(たとえば世界を囲む大蛇ヨルムンガンド)が登場し、海という混沌が、神々や巨人の闘争と結びついて描かれていきました。
一方で、フィヨルドという奥深い入り江が、多様な交易の拠点となって北欧社会を支えました。この複雑な湾は、氷河によって削られた谷が沈水して海とつながった地形で、水深が深く大型船の航行に適しています。遠浅の海域ではないため船舶の接岸が容易で、いわゆる天然の良港が発達します。
ヴァイキングにとって、フィヨルドは陸上移動が困難な地域をつなぐ海の道であり、ここに作られた港は各地の文化交流を促す拠点でした。こうした地形の特質と人々の航海術が結びつき、時に略奪者として恐れられながらも、彼らはヨーロッパ全体に影響を与える存在として歴史に登場します。
このように海洋という要素は、神話世界でも大きな役割を担い、北欧の人々にとって境界の向こうに広がる不可知の領域を示唆しました。
火山活動の脅威が「神話的終末観」を訴えた?
さらに、北欧でもアイスランドは特異な位置づけにあります。アイスランド島は大西洋中央海嶺と呼ばれるプレートの広がる境界上に位置し、マントル上昇部にあたるため、火山活動が盛んです。地熱を利用した発電(地熱発電)が発達し、観光客が集まる温浴施設「ブルーラグーン」が世界的に有名です。
地熱の噴出や火山の噴煙は、まさに火の世界のイメージを現実に体感できる環境であり、実際に2010年にはエイヤフィアトラヨークトル火山が噴火して大量の噴煙を放出し、ヨーロッパの航空路が一時遮断される事態となったこともありました。
こうした火山の脅威は、中世の人々にとっては神々の怒りや巨人の活動と結びつけられ、終末思想ラグナロクのリアリティを高める要因ともなったと推測されます。特に気候変動や噴火の影響が大きかった時代には、社会不安が増大し、神話的終末観が人々の意識に強く訴える状況が生まれたのではないでしょうか。
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