思わず「へえ~」と感心してしまう”宗教と地理”の関係 壮大な「北欧神話」は過酷な自然環境が生んだ!
北欧世界が外部との接触を深める中で、徐々にキリスト教が伝わり始めたのは中世初頭、おおむね10~12世紀のことです。
当時のヨーロッパでは、まだプロテスタント(16世紀の宗教改革で生まれたキリスト教の一派)は成立しておらず、キリスト教といえばカトリック(ローマ教会を中心とした西方教会)が主流でした。海や川の航路を通じた宣教師の布教やヴァイキングの遠征がきっかけとなり、港湾都市などの交通の要衝からカトリック教会の影響が広がっていきます。
内陸や山岳地帯などでは、土着の神々への崇拝や儀礼が根強く残っていましたが、王侯や有力者が徐々に改宗すると、キリスト教が北欧社会の公的な宗教として認められる流れが加速していきました。
この過程で、異教とみなされていた北欧神話は表舞台から退きましたが、同時に「昔の信仰や物語」として文書にまとめられ、後世に伝えられていきます。
代表的なのが13世紀にアイスランドで編纂された文献、『エッダ(Edda)』や『サガ(Saga)』などです。
特に、歴史家であり詩人でもあったスノッリ・ストゥルルソン(1178~1241年)が記した『スノッリのエッダ』は、神々の系譜や世界観を体系的にまとめた重要な史料として知られています。キリスト教が支配的となった社会で、古代の伝承を文学作品や歴史的遺産として書き留めることで、北欧神話は途絶えることなく現在まで伝わりました。
北欧神話を地理と歴史の両面から読み解く
近代以降、北欧の国々では宗教改革(16世紀)を経てプロテスタントを国教とする国が多くなりましたが、それと同時に自らの民族的ルーツを探る動きが活発化し、北欧神話は文化的同一性の源として再評価されていきます。
厳しい自然環境を生き抜いた祖先像や、多神教的な世界観、そしてヴァイキングの歴史が結びついた北欧神話は、観光資源としても魅力的で、ノルウェー北部・ロフォーテン諸島で毎年8月に開催される「ロフォト・ヴァイキング・フェスティバル(Lofotr Viking Festival)」が知られています。
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