思わず「へえ~」と感心してしまう”宗教と地理”の関係 壮大な「北欧神話」は過酷な自然環境が生んだ!
現代では、北欧神話を読み解く研究がさらに進展しています。たとえば、考古学・歴史学・文学研究を横断的に行う学者としては、イギリスの考古学者ニール・プライス(1959年~)が『The Viking Way』(2002年)などの著書で、ヴァイキング時代の宗教・呪術と地理的環境の関係を探究した例が挙げられます。
また、アイスランドの学者シグルズル・ノルダル(1886~1974年)や、北欧中世文学を専門とする研究者が、火山噴火や気候変動の史料分析と『エッダ』の内容を照らし合わせることで、ラグナロクや巨人観が当時の自然災害や社会的危機に強く影響されている可能性を指摘しています。
起源神話を文化的遺産として伝え活用してきた
こうした学際的アプローチを通じて、古代の人々がどのような自然環境を見つめ、そこに神や巨人、怪物といった存在を配置することで世界を理解しようとしていたかを研究しています。
単に北欧神話の物語構造を解釈するだけでなく、寒冷な気候・火山活動・海洋交通といった地理的条件が、人々の宗教や信仰を形成するうえで重要な役割を果たしています。北欧神話の中に見られる荒々しい自然描写は、当時の人々にとって現実の脅威にほかならず、それゆえ神々や巨人たちの抗争を通じて秩序と混沌の関係を物語ろうとしたのではないかと考えられます。
そしてキリスト教を受容した後も、北欧の人々は自らの起源神話を文化的遺産として伝え、現代に至るまで多くの学術研究や観光資源として活用してきました。
地理的制約を超えるために航海術を発達させ、火山や寒冷化などの災害を神話的終末観と結びつけ、やがてキリスト教という外来宗教を受け入れながらも自らの伝統を記録として残した北欧社会は、地理と宗教の相互作用を理解するうえで非常に興味深い題材となっています。
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