思わず「へえ~」と感心してしまう”宗教と地理”の関係 壮大な「北欧神話」は過酷な自然環境が生んだ!

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また、高緯度ならではの白夜が起こる地域もあり、夏至(6月21日あたり)前後には夜でも薄明るい状態が続きます。これは、地球が地軸を約23.4度傾けながら太陽の周りを公転しているために、高緯度地帯が夏の時期に連続して太陽光を受ける時間が長くなることが原因です。逆に、冬は太陽がほとんど昇らない極夜となり、人々の生活リズムや心理に大きな影響を及ぼしました。

こうした昼夜の概念を超越した環境は、北欧神話にも反映され、光と闇のせめぎ合いや、多層的な時間感覚の捉え方につながったのではないでしょうか。

実際、北欧神話では氷や雪だけでなく、火と氷がぶつかって世界が生まれたという創世神話、ギンヌンガガプ(Ginnungagap)が語られます。ここでいわれる火とは巨人スルト(Surtr)が支配する「ムスペルヘイム(Muspelheim)」からやってくる熱と炎、氷は氷と霧の世界「ニヴルヘイム(Niflheim)」を象徴し、その2つが深淵の空間で衝突し、そこから巨人ユミル(Ymir)や世界を形作る要素が生まれました。

つまり、火山活動や地熱を連想させる火の世界と、氷点下が常態化する氷の世界という、自然環境そのものを想起させる舞台設定が、神話の根幹に組み込まれています。当時としては未知なる自然の成り立ちを説明するうえで熱と寒冷を衝突させる構図は、この地域の人々にとって説得力のある神話だったのではないでしょうか。

過酷な荒海と火山の脅威が育んだ神話世界

北欧世界を語るうえで欠かせないのが、8世紀頃から11世紀末まで活躍したヴァイキングの存在です。ヴァイキングは、北欧諸地域の住民が大型船(ロングシップ)を操り、遠征や交易、さらには一部では略奪行為にも及んだ人々を指します。

彼らは、当時としては革新的な造船技術を持ち、北海やバルト海だけでなく北大西洋を横断してアイスランドやグリーンランドまで到達し、一部はヴィンランド(レイフ・エリクソンが上陸した北アメリカ大陸の地名)へも足を延ばしたとされます。

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