――大根監督が気になっていたポイントは?
とにかく空気感。編集の仕事内容というよりは、編集者がどういう空間にいるのか、どういう格好をしているのか、どういう時間帯に働いているのかなど、そういったところを見ていたようです。
画面に映らない名刺に至るまで編集部を再現
――美術監督の都築雄二さんが手がけたジャンプ編集部セットの再現度がとにかくすごいと聞きました。集英社労組のティッシュなども登場していましたし。
そうなんです。あのティッシュも本物そっくりに作られているんですよ。この人たちはちょっとおかしいんじゃないかというくらいに、実際に画面に映らないものであっても、細かいところまできっちりと作り込んでいましたね。われわれが現場に行った時にも、こんなものまで作っていたのか、バカだなぁと思ってしまうようなものをたくさん見つけました。もちろんこれは褒め言葉なんですけどね。
――たとえばどのようなものが?
おそらく画面に映っていないんじゃないかと思うのですが、僕たちの使っている本物の名刺をそのまま再現してデスクに貼ってあるんです。エクセルで作った毎日の予定表もそのまま作られていた。僕らからすると、これいる? と思ってしまうようなことなのですが、そんなところまで忠実に再現している。それからコピー機まわりの再現度も驚きですね。箱の置き方の雑な感じとか、袋の開封具合なんかもほぼ完璧なんですよ。
それから、作家の先生方のファンレターを仕分けするケースが映画の中で出てきますが、これもほぼうりふたつです。本物よりもちょっぴり奇麗ですが、ファンレターが入っている量までほぼ一緒。これは本当にすごい。きっとほかにも僕らが気付かないものがたくさんあるはずです。
――編集者役の役者さんの再現度はどうですか?
役者さんも具体的にどこがどうというわけでなく、空気感がすごいですね、こんな編集者、本当にいそうだなといった感じがしました。たとえば編集長役のリリー・フランキーさん。回想シーンで、作家さんに連載終了を告げるところがありましたが、そこでの申し訳なさそうな顔というのが、昔はきちんと現場をやっていて、後に出世はするにせよ、挫折もしっかりと味わっている人の顔なんですよ。あれはすごいなと思いました。
――編集者の立場で見ると、あるあるネタ満載なのでしょうね。
そうですね。(主人公コンビを支える編集者・服部哲役の)山田孝之さんで言ったら、連載を取った時の喜び方が絶妙でした。はしゃぎすぎちゃダメだし、作家さんよりも喜んじゃダメなんですよ。連載は作家さんのものですから。そこは冷静さがいるんですよ。本当に喜んでいるんだけど、押さえている感じというか。そういう細かいところが本当にうまいなと思いましたね。
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