歴史ある映画祭には追いつけない
――椎名さんがディレクター・ジェネラルに就任してから、今年で3回目の映画祭を迎えるわけですが。これまでの手応えは?
とにかく大変な仕事を引き受けてしまったなというのが正直なところ。良きにつけあしきにつけ、TIFFって目立つイベントなんです。一生懸命やってもあまりいいことは言われないし、始まったら始まったで大変だし。就任当初はとにかく手探りだった。もっともっと映画祭の知名度を上げて、どうやったらよくしていけるのかを考えたのが1年目だった。
しかし2年目で追い風になったのは、アベノミクス政策の効果で経済が徐々に回復してきたこと。映画祭でいちばん大変なのは資金集め、スポンサー集めですから。これは東京だけでなく、海外でもどこも苦労しているところです。文化というのは、経済の影響を受けやすいものなんです。経費カットとなると真っ先に文化から削られますからね。
――すると今年はホップ・ステップ・ジャンプの「ジャンプ」の年になるわけですか。
3年目という意味ではホップ・ステップ・ジャンプかもしれませんが、ただTIFFというものは1985年から始まってもう30年もやっているイベント。国際映画祭という名の下で自問自答した時に、まだまだそこまでの水準にはいってないというのが僕の率直な意見です。
――世界には、カンヌやベネチアといった70年以上の歴史ある映画祭があります。そこを目指そうということですか。
もちろん映画祭をより大きくしたいという意見はありますけれど、われわれがそういった歴史ある映画祭に簡単に追いつけるとは思ってはいない。そことは違った東京らしい映画祭を確立しなくてはならないということです。そこで昨年からいろいろなことにチャレンジしています。
それがなぜできるのかというと、アベノミクス政策を背景とした国のバックアップがあったから。もちろん映画ファンのための映画祭ということはベースにあるわけですが、そこにプラスして日本映画の発展、映画祭を通した文化の交流といったことにより力を入れられるようになった。3回目の今回に求められているのは、ほかとは違った映画祭を確立することだと思うんです。
――今は畑を耕している状態ですか。
30年たってまだ耕しているのかという意見はあるでしょうがただ今回、ラッキーだったのが、2020年に東京オリンピックが開催されること。東京、日本が注目されているという状況の中で、大きな目標ができました。
映画祭は毎年あるわけですから、そこに向けてどう積み重ねていくか。そして2020年のオリンピック後に向けてどう残っていくか。それは大きく意識していますね。
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