東京国際映画祭には、大きな「弱点」がある トップが語る「2020年に向けてやるべきこと」

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六本木ヒルズを中心に10月31日まで映画祭が行われる(撮影:宇都宮 徹)

――海外の映画祭との連携も意識しているそうですが。

去年くらいから、海外の映画祭とのネットワーキングを広げています。昨年もトロント国際映画祭のアーティスティック・ディレクターやカンヌ映画祭の代表補佐なども招待させていただきましたし、今年もロカルノ国際映画祭のプログラマーを招待しています。はっきり言ってTIFFは、海外との連携がものすごく遅れているし、ほかの映画祭に比べても全然できていなかった。

そういうネットワーキングを広げることは重要課題でしたが、その効果も少しずつ現れてきています。そうした関係者が映画を観てくれることで、自分が気に入った作品があれば、それぞれの映画祭で上映してくれる。日本の監督たちもパーティーの席などで彼らと出会う機会が増える。それは非常に地道なことだけど大事なことだと考えています。

今回、「SAMURAI賞」にジョン・ウー監督を呼べたのも香港映画際とのつながりがあったからですよ。それからワールド・フォーカス部門の中の中国映画ですが、これは上海国際映画祭が選んでくれたもの。上海国際映画祭で話題になったものをやりましょうということですから。それがネットワーキングということだと思うのです。

――結局は人とのつながりが大事になっていく、と。

そうです。ハッキリ言ってTIFFスタッフの個々の能力は高いと思ってます。ただ圧倒的にスタッフの数が足りない。たとえばアジアの映画祭で、TIFFと比較されているような映画祭には、アジア担当とか、フランス担当、イタリア担当といった専門の担当者がそれぞれいるわけです。

そういったところにはなかなか勝てないですよ。日本のスタッフも能力が高いから何とかやっていますが、それでもそこから生まれる人脈だって限られたものにしかならない。ものすごい監督の作品があって。それを映画祭に持ってこられるかどうかはカギになるわけですが、その情報をいかにして手に入れるか。ほかにも映画祭はいっぱいあるわけで、みんながいい作品を狙っているわけです。そういった情報がなければ持って行かれてしまいますよね。

よく「ほかの映画祭ではこういう作品がやっているのに、TIFFでは……」といった批判記事を書かれることも多いのですが、そういうところに問題があるんですよ。

アニメは映画祭に重要なコンテンツ

――椎名さんが就任してからアニメ作品が大きな柱となったように思うのですが。

やはり日本を代表するコンテンツはアニメだと思うんです。それはアジアの国のどこにもできない日本独自のものだと思います。だからそこに光を当てていくことは重要だと思います。昨年のレッドカーペットには、ドラえもんやウルトラマンが歩きました。確かにあれはどうなの、という意見もありましたが、実際に歩いてみて、評判を聞いてみてもやってみてよかったなと思いましたよ。ほかの国のレッドカーペットでは見られないものですからね。

――それから昨年は庵野秀明監督の特集が盛況でした。

アニメを特集するという時に、やり方の選択肢はいろいろあるだろうなと思っていました。いろんなアニメを集めたり、アニメのコンペを作ったりとか。でもその中の「ひとつの特集をやることが大事」ということは、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーから言っていただいたことで。そこから庵野さんの企画を出してもらい、尽力していただきました。2年目も映画祭で決めようということになり、今年は「ガンダム」でいこうということになったわけです。

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