――昨年の予算規模は11億円とありましたが、今年の予算規模は?
それより若干は上がっていますが、だいたい同じです。新しいことにチャレンジできるという意味ではよかったと思います。ただ問題なのは、中国や韓国には勢いがあり、そういったところは国が文化事業に力を入れていて、文化立国としてやっていきたいという意志があるわけですよ。そういうところと比べたら、日本はまだまだ劣っているなという感じはします。
だから(TIFFと同じ10月に開催される韓国の)「釜山国際映画祭には負けていますよね」なんて言われてしまうわけです。
常駐スタッフの差が映画祭の差に
――TIFFの地位を高めるためには、さらなる行政のサポートが必要ということですね。
映画祭というものは、結局はボランティアの力で支えられるものなんです。去年は約200人のボランティアに支えられました。しかし実はその仕組みそのものに問題があるんです。30年の歴史がある映画祭なのに、なぜ認知度や知名度がまだまだなのか。
結局は「人」なんです。10年、20年単位で人が残っていないため、継続性がないんです。たとえば上海国際映画祭は今年で18回を数えますが、あそこには第1回から18回までの歴史をすべて語れる人がいるわけです。カンヌやベルリンだってそうです。つまり、スタッフが常駐しているわけで、それをまかなうための予算が国からあるということなんです。そこは何とか変えなくては、というのが映画祭の課題ですね。
――観客から見れば10日間だけが本番だと思われがちですが、実際には1年単位、10年単位で考えなければいけない。
おっしゃるとおりです。TIFFでは、1年間常駐している人間は20人かそこらしかいません。10月が近づくにつれてスタッフの人数は増えていくわけですが、そのノウハウが継続できてないわけなんです。よく言われることとして、映画業界にとって何かの見返りがあるのでしょうと。でもそんなハッキリしたものはないですよ。映画業界の中では、これで潤っている人間なんていないわけだし、みんな持ち出しですよ。人も出しているし、おカネも出している。
結局、映画祭というのは、映画を通して日本のいいところを海外にアピールするきっかけになるものということですよね。昨年、タイ特集をやったのですが、タイの大使は50~60代で。彼らは日本のドラマを観て、日本にあこがれていたと言ってくれるんです。
でも今の若い世代は、韓流ドラマなんですよ。そういう話を聞くと、われわれの努力が足りなかったなと思います。役者や作品が一緒になって、日本の作品をもう一度見直してもらえるよう努力をしなきゃいけないと思います。
――そのために考えていることはありますか。
たとえばコンペ部門でカンボジアやインドネシアの映画を上映するとしますよね。そうすると、その国の放送局が東京国際映画祭のコンペ部門に選ばれましたといって放映してくれる。これがものすごい宣伝になるわけですよ。日本でもカンヌ国際映画祭に選ばれましたというとニュースになりますが、それと同じ現象があるわけです。
海外メディアへの対応は今年の重要なテーマのひとつになっています。主にアジアからですが、海外の記者さんをたくさん呼ぶことにしました。去年も呼んでいましたが、今年はさらにそこが重要だということがわかったので。映画祭というのは、作品と俳優、マスコミの3つのパッケージが必要だと考えています。
――今年の映画祭の日程は10日間に増えました。
日程は1日増やしました。僕はオープニングの平日開催にこだわったので、土曜日開催から木曜日開催に変えました。木曜日というのはどういうことかというと、その次の日となる金曜日にワイドショーなどで話題が出るということ。2年連続で、TIFFの瞬間視聴率が上がったり、露出度ランキングで1位を記録したりしましたから、これは読みがピッタリ当たりましたね。
ただ、一方でクロージングに関しては納得がいきませんでした。昨年のクロージングは金曜だったのですが、授賞式の後に上映という形が作れなかった。だから今回は時間的な幅が取るためにも土曜日にしました。今年はもう少しクロージングをにぎやかに充実させたいと思っています。
――今年は会場として新宿も追加されます。
これまでは、映画館に行くと映画祭で盛り上がっているのに、外では映画をやっているという実感がなかった。これは周囲の商店街の協力があってのものなので、そういった一体感が得られなかったことについて反省があります。そんな中、今年は新宿の商店街が映画祭をバックアップしましょうと表明してくれた。新宿という街は日本一の集客力がある映画街ですから、そこで映画祭をやってみたいという思いもありました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら