ロボットには「センサー」「駆動系」「知能・制御系」という3つの構成要素があります。
このうち「知能・制御系」は、近年のAIの劇的な進化により知的レベルが一気に上がり、単純な情報処理から自律的とも呼べるほど高度なレベルにまで到達し始めているのです。フェーズが変わったともいえるでしょう。
ロボット開発を加速「Sim2Real」とは
2024年夏頃にYouTubeで堀江貴文さんが「すげぇ~すげぇ~」と言って操作している犬型ロボットが話題になりました。
この犬型ロボットは中国Unitree製の数十万円のものですが、周囲を計測するセンサーを使わずに、ロボットの運動神経、反射神経だけで段差や階段を乗り越えていったのです。
このロボットの裏で大活躍していたのも、AIの存在です。
さて、ロボットとAIの融合が価値を発揮するのは、単にロボットを実世界で動かすときだけではありません。実は、ロボットがどのように動くかを学習する過程でもこのAIという技術は非常に重要です。
たとえば、ロボットに新たな動きやスキルを学ばせるためには「模倣学習」や「強化学習」といった手法が用いられます。模倣学習は、ロボットが人間や他のロボットのお手本となる動きを真似する方法で、強化学習はよい動きをしたときにご褒美をもらえる仕組みです。
しかし、これらの学習手法はロボットが新しいスキルを習得するために不可欠である一方で、大量のデータが必要です。
特にロボットの場合、実世界での動きに関連するデータを集めることが非常に困難です。画像認識ならインターネットなどで大量のデータを比較的容易に手に入れることができますが、ロボットの動作データは物理的な環境で収集しなければならないため、その難易度は一層高まります。
この問題を解決するために、最近注目されているのが「Sim2Real」と呼ばれる技術です。
Sim2Realとは、「シミュレーションを現実に変える(Simulation to Real)」を略した言葉で、文字通りシミュレーション(Simulation)により仮想空間内でロボットを動かし、そのなかで大量のデータを収集、学習し、その学習結果を現実世界(Real)に適用する方法です。
冒頭の堀江さんが見たロボットも、この技術が思う存分に活用されていたのです。
このロボットシステムは千葉工業大学fuRoで研究されたもので、階段や異なる地形が作られた仮想環境に4000台ほどの犬型ロボットを解き放ち、最初は転倒しながらも自分で学び、最終的に歩き方を習得することができたのです。
ある意味では厳しい環境条件のなかで5時間ほどスパルタ訓練を経験することで、歩くスキルを自律的に学習したという状態です。
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