この技術革新によって、ルンバがただの掃除機から「賢い掃除機」へと進化していることを実感できます。
しかし、冷静になって考えてみましょう。床に落ちたウンチを正確に認識することはそんなに簡単なことではありません。
当然、ウンチのかたちは1つひとつ、そして、日々違うでしょう。犬種が違えば大きさも違うでしょうし、餌が違えば色も違う、体調も違えば……と考え始めればキリがありません。
そんな無限にバリエーションがあるように思われるウンチを正確に認識しなければならないのです。
そして、逆に床に落ちているゴミをウンチとして認識し、吸い込むことができなければ、掃除ロボットにもなっていないので、元も子もありません。つまり、ウンチだけを正確に見極める必要があるのです。
難問を解くカギは人工知能
この超難問を解くことを支えているのが「AI(人工知能)」です。
非常に簡単、かつ限定的な説明になりますが、AIとは、画像、音声、文字など何かお手本となる大量の正解データから、その特徴・パターンを学習し、学んだ特徴・パターンをもとに、初めて見るデータに出会ったときに正解を推定するようなものといえます。
この考え方にもとづいたときにルンバがしなければならないのは、大量のウンチのデータから、ウンチの特徴やパターンを学び、掃除中に目の前に現れたモノがウンチかどうかを推定するということになります。
ここで大きな問題が生じます。世の中には、部屋のなかに落ちているウンチの画像を、誰も大量に持っていないということです。
そこで彼らがしたことは、実際のウンチの写真と模擬ウンチの写真と合成写真とを使って綿密に学習データセットを準備するということです。
ルンバをつくるiRobot社の発表では、少なくとも137個以上の多様な形状、サイズの模擬ウンチをつくり、検証を進めてきたことが明らかになっています。
それらのデータを取り込み、実際の写真データと模擬データをもとにパソコン上に、さまざまなパターンのウンチを仮想的につくり出したのです。その数は10万枚以上の画像データになったそうです。
いまや、掃除ロボットは日常生活のなかでなくてはならないものとなるまでに浸透しています。
いまでは吸っては困るものを回避する機能の対象は、ペットの糞だけではなく、コードやケーブル、スリッパ、靴下などさまざまなものに広がっています。
そして、家庭やオフィスでの掃除を劇的に効率化し、私たちの生活をより便利で楽にしてくれる、その裏では、大量のデータからつくり上げられたAIがロボットの動きを支えているのです。
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