安川電機が「隣で働くロボット」を強化する事情 人手不足を背景に「協働ロボット」市場が拡大
コンベアで流れてくる飲むヨーグルト6本が入った箱を、ロボットのアームがテンポ良く動いて運搬用パレットに積み上げていく。岩手県西和賀町、自然豊かな場所にある小さな乳製品工場。その箱詰め室にロボットが導入されたのは、今年8月のことだ。
湯田牛乳公社は1966年設立で、主力製品であるヨーグルトは“もっちり”した食感と“すっきり”した味わいで親しまれてきた。近年はブランド改革の成果もあって引き合いが強まっている。
工場は基本的に年中無休。ヨーグルトの製造現場では23人の従業員が交代制で作業をするが、「それでも生産が需要に追いつかない状態だった」と高橋司・取締役製造部長は振り返る。増産をしようにも、「西和賀では思うように採用ができず、人手不足に困っていた」(高橋製造部長)。そこで頼ったのがロボットによる省人化・省力化だ。
まず、2022年10月に冷蔵庫内の積載作業にロボットを1台導入。「プレミアム湯田ヨーグルト」5個が入った約4.5キログラムの箱を、1日1800箱、運搬用パレットに載せる作業をロボットに任せた。これまで作業にあたっていたのは50代から60代の従業員で、低温環境も相まって腰痛を訴える声もあったが、労働負荷を大幅に軽減できた。
2023年8月には、箱詰め室内での箱詰め作業と積載作業に1台ずつロボットを導入したことなどで4.5~5人分の作業を省人化できたという。「生産効率が上がり、これまでは1日平均2時間ほどあった残業が、ほぼゼロになった」と高橋製造部長は満足そうに語る。
需要高まる「人協働ロボット」とは
湯田牛乳公社が導入したのは、産業用ロボットの中でも「人協働ロボット(以下、協働ロボット)」と呼ばれるもの。
自動車やエレクトロニクスの工場で活躍する産業用ロボットは、溶接や重量物の高速搬送といった人間には困難で危険を伴う作業を担うことが多く、安全上、作業員が近づけないよう安全柵を設置するのが一般的だ。
対して、協働ロボットは人が近くにいると動作スピードが遅くなったり、止まったりするように設計されている。国内では、2013年に厚生労働省が「産業用ロボットと人との協働作業が可能となる安全基準を明確化」したことで、協働ロボットの開発や導入が進むようになった。労働力不足なども背景に、食品や化粧品、医薬品といった幅広い産業でニーズが高まっている。
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