「最盛期1328人→現在47人」ある限界集落の歴史 「007」ロケ地、鹿児島県南さつま市・秋目の歩み
集落には漁船を所有する漁師が多くいたため、宿では予約を受け付けて集落の漁師たちに振り分けて手配する対応をしていた。
「電話はぐるぐる回して交換手につないでもらった時代です。予約を受けたら、漁師さんのとこへお願いしにいくんですよ。その対応が大変だったみたいです」
釣り客が増えたため、針や糸などの釣り道具や下着のほか、パンやカップラーメンなど釣り客が必要な物を雑貨屋で扱うようになった。

ハリウッドのロケ隊が秋目に上陸
宿を始めたのと同じくらい、秋目がハリウッド映画のロケ地に選ばれた。その映画とは、ハリウッド超大作であり、ジェームズボンドが活躍する007シリーズ5作目『007は二度死ぬ』だ。
映画の中で、秋目はジェームズボンドが漁師に扮装して潜伏した漁村として登場している。青い海と山に囲まれた漁村の風景は、映画の中で独特の情緒と存在感を放っていた。ジェームズボンドが「ジャイロコプター」と呼ばれる一人乗りのヘリで秋目上空を飛び回る様子は圧巻なので、ぜひ映画を見てみてほしい。
ロケが行われたのは昭和41(1966)年、8月1日の真夏の暑い時期にロケ隊が入り、撮影期間は約2週間。「上塘旅館」は俳優たちの休憩所としてスタッフが出入りしていた。
「6歳だったので、外国の人がたくさんいるなということしか覚えていなくて。その後、うちでロケしている写真を見たり、007ファンの方が見せてくれた資料で知ったこともたくさんあります。でも食べ物のことは覚えていて、サンドイッチとコカ・コーラを出してもらいましたね」
集落にはロケ隊が滞在できる規模の宿はなかったため、指宿市のホテルに泊まり、そこからヘリで秋目に通っていた。上陸するヘリポートを設営するために、秋目の畑を地主から買い取った話が有名である。ロケが終わった後、土地は返還されたという。
「そのヘリポートの水巻きが高校生のアルバイトで500円。その頃の500円はもっと高いですよ。今でいう5000円くらい。短時間で終わるからいいバイトだったみたいです」
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