節度を持った相手からの質問には、初見であってもあまり間を置かずに丁寧に返信しており、コミュニケーションを閉ざしている感じはしない。それでも「もうすぐ死にます」という予定は揺るがない様子だった。具体的な日時を宣言したわけではないが、残金や投稿の様子から10月頃に決行するのではないかとの気配が漂っていた。
この時期、筆者は初めて連絡をとった。自殺願望を吐露したSNSやブログを追いかけた書籍(『バズる「死にたい」』)を刊行して間もなくの時期であり、自殺願望を抱く人がどういう意図で投稿しているのかもっと知りたいと思ったためだ。
「僕が死んだ後にここを見てほしい」
アカウントの持ち主(以下、ハンドルネームから「Yさん」と書く)からは、すぐにメッセージが届いた。決行した後にXアカウントをどうしたいのかを尋ねた質問への返答だ。
「親に対して僕が死んだ後にここを見てほしいという気持ちはあります。若い頃に家族から見放されずっと一人暮らしなんですが、病気もあり、本当に金欠になったとき親にすがりついた時もありました。しかし、どうせ金欲しさだろう、くらいの感じで突き放されました。本当に辛かったということを伝えたいのです」
死後に何をしてほしいという期待はとくにない。けれど、親にはここに至った胸の内、それを全公開で残して去ったということが伝わる状況は残しておきたい。ある種、迷いがなくなり完結した心情になっているように読めた。
あとは投稿を追わせてもらうだけ。そう考えた矢先の10月13日。Yさんアカウントは突然「k」と名前を変え、過去の投稿がほぼ一掃された。
ほんとたまたま1つのツイートがバズってフォロワー増えただけなので全然外してもらって大丈夫です>
(2024年10月13日投稿 ※削除済み)
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