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「終活は60歳からがいい」と禅僧が勧める深い理由 「お金の相続」より大切な「心の相続」

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  • 枡野 俊明 「禅の庭」庭園デザイナー、僧侶
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では、死に支度とはどのようなものか。一般的には、死を前にしての心配を一つひとつ解消していくことを指します。

例えば、自分が死んだらどこのお墓に入れてほしいか、家や土地、現金などの財産を誰にどう分けるのかなど、いわゆる「相続」に関するものです。

特に財産分与は家族間の仲違いの種ですが、これらは遺言状によって明確に意思表示をしておくことで、おおむねトラブルを避けられるでしょう。

しかし、思い残すことなく旅立つには、そうした形あるものの相続だけでは足りません

相続にはもうひとつ「心の相続」があります。それは、自分が歩いてきた人生の道のりや、そこから学んだ経験を次の世代に継いでもらうことです。

先ほど申し上げたように、人の死には、肉体の死と、遺族や近親者、友人の心から、故人の存在が消えたときの死の2つがあります。心の相続は、2度めの死を遠ざけるためのものだと言えるでしょう。

そもそも本来の相続とは、心の相続のことを指すということも覚えておきましょう。相続という言葉自体が、もともとの意味は、師匠が弟子に教えを伝えることであり、仏教に由来しているのです。

自分の「生きた証」を受け継いでもらう

心の相続のため、ぜひしていただきたいのは、「家族の歴史」の継承です。自分の祖父母の話や、祖父母から聞いた先祖の話を、子供や孫に聞かせるのです。

三世帯同居の世帯が普通だった時代は、祖父母から若い世代へと、家族の歴史が受け継がれていたものです。

しかし、核家族化が進んだ昨今は、家族の歴史の語り部がいません。それは、自分の代まで語り継がれてきた家族の歴史が、途絶えてしまうということ。子どもたちが、自分たちのルーツを辿れないということ。先祖を2度めの死に追いやるような真似は、あなたもしたくはないはずです。そうであるならば、祖父母にかわり、あなたが家族の歴史の語り部になりましょう。

もちろん、あなた自身のことも書き残しておかなければいけません。

その手段として「エンディングノート」や「自分史」があります。

一般的にエンディングノートというと、通帳やハンコ、保険証などの貴重品類はどこにしまってあるか、最期を迎えたいのは自宅か病院か、亡くなったら誰に連絡するべきか等、死後の事務処理をスムーズにするための情報をまとめたものですが、遺族に伝えたい、心を込めたメッセージをしたためるのもよいでしょう。

自分史は、いわば自分の生きた証を残すことです。

というと大袈裟ですが、気負う必要はありません。

故郷のことや、幼い日々のこと、両親の思い出、打ち込んできた仕事のこと、家族との幸せな日々、苦しかった時期をどう乗り越えたか、追い求めていた夢のこと、縁のある人への感謝の気持ちなどを、率直に書けばいいのです。なかには、文章ではなく映像に残す方もいます。

あなたは、あなたの生涯をどんなふうに語り継いでもらいたいですか

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