アップルやNVIDIAがトランプに擦り寄らない事情 擦り寄る企業のビジネスモデルとの違いは何か
広告収入を主軸とするビジネスモデルは、必然的にユーザーの個人情報の収集と活用を促進する。より詳細な個人情報を得られれば広告の効果は高まり、収益も増大するからだ。2004年に創業したFacebook(現メタ)は、最初からこの広告モデルを前提としていた。アマゾンも、自社サイトでの販売促進のために顧客の行動追跡を行っている。
当初、この個人情報の活用は「欲しい商品がどんどん見つかる」と歓迎する消費者もそれなりにいた。しかし、イギリスのケンブリッジ・アナリティカが広告システムを巧みに利用して世論操作を行い、ブレグジット(イギリスのEU離脱)や、第1次トランプ政権の誕生に影響を与えたことが明らかになると、状況は一変する。
個人情報の収集と活用は、プライバシー侵害という深刻な問題として認識されるようになった。特にメタのマーク・ザッカーバーグは、この問題で何度もアメリカ議会の公聴会に召喚されている。
これに対して、アップルの収益の大半は、iPhoneなどの製品販売によるものだ。Apple Musicなどの例外を除き、同社はインターネットビジネスを主軸としておらず、その意味で日本のメーカーに近い製造業の性格を持つ。
ただし、OSを含むソフトウェアの開発能力が極めて高い点が、日本の製造業との大きな違いとなっている。このビジネスモデルは、個人情報への依存度が低いという特徴を持ち、それゆえにプライバシー保護を強みとすることができる。
この姿勢は、2016年のアメリカ連邦捜査局(FBI)との対立で鮮明となった。14人を殺害し22人に重傷を負わせた事件の容疑者が使用していたiPhone 5cのロック解除を要求されたアップルだが、ティム・クックは公開書簡で「すべてのiPhoneユーザーのプライバシーを脅かす」「世界中のiPhoneユーザーのデータを危険にさらす」として、この要求を明確に拒否。
「政府の要求に応じる前例を作ってしまうと、将来的に他の政府からも同様の要求が来る可能性がある」と指摘し、「この要求は、私たちが持つ最も重要な価値観とアメリカが守るべき自由を脅かすもの」と主張した。
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