AI時代にこそ求められる人間のリアルな感覚 子どもの非認知能力は外遊びで伸びる

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為末:そんなに差があるんですね。

窪田:バーチャルでは最新技術を使い、まさに先生がその場にいるかのようにホログラムで再現されていたのですが、それでもリアルには及ばなかった。だから、どんなに技術が進化しても、再現できないものがあるのです。

特に子どもの場合は、リアルとバーチャルでは受け取る情報の豊かさが全然違います。それだけリアルの経験が、教育に及ぼす影響は大きいと言えます。

為末:なんとなく感覚としては分かっていましたが、研究でも明らかにされているのですね。初めて知りました。

近視の対策で日本が取り残されないために

為末:私がメンバーとして活動している「外あそび推進の会」では、外遊びによって近視の発症を予防することができることや、進行の抑制につながることを発信しています。特に、小さなお子さんたちを育てている同世代の人たちに知ってほしいです。

窪田:日本ではまだまだ「近視になったらメガネをかければいい」と思われていますが、近視は将来的に失明のリスクを高める可能性のある怖い病気です。

(図:『近視は病気です』より)

2024年9月には米国医学アカデミーから、近視の増加を食い止める必要があると発表されました。世界的に見ても、近視の予防は重要なトピックスになっているのです。

為末:「外あそび推進の会」などで近視の話をすると、ほとんど方が「知らなかった」とおっしゃいます。まだまだ説明が必要なフェーズだなと感じます。

窪田:全米科学アカデミーでは、地球温暖化から量子コンピューティング、AIまでありとあらゆるサイエンスの分野を網羅的に手がけていますが、そこがわざわざ一眼科疾患である近視を取り上げて警鐘を鳴らしている。日本ではそうした報道すらされていないことが、本当に怖いなと。

しかも、日本は近視の有病率が高い国の1つですからね。何十年後かに、日本だけが近視がある国として取り残されないようにしていきたいです。

窪田良
窪田良氏(撮影:梅谷秀司)

為末:私も同年代のアスリートや友人知人たちが親になってきているので、彼らにはとにかく子どもを外で遊ばせるだけで近視が防げることを伝えています。

窪田:ぜひこれからも一緒に広めていきましょう。為末さん、今日はありがとうございました。

(構成:安藤梢)

窪田 良 医師、医学博士、窪田製薬ホールディングスCEO

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くぼた りょう / Ryo Kubota

慶應義塾大学医学部卒業。慶應大医学部客員教授、米NASA HRP研究代表者、米シンクタンクNBR理事などを歴任。虎の門病院勤務を経て米ワシントン大学助教授。2002年創薬ベンチャー・アキュセラを創業。2016年窪田製薬ホールディングスを設立し、本社を日本に移転。アキュセラを完全子会社とし、東証マザーズに再上場。「エミクススタト塩酸塩」においてスターガルト病および糖尿病網膜症への適応を目指し、米FDAからの研究費を獲得し研究開発を進めているほか、在宅医療モニタリングデバイスや、ウェアラブル近視デバイスの研究開発を行っている。

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為末 大 元陸上選手

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ためすえ だい / Dai Tamesue

Deportare Partners代表。1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2024年12月現在)。現在はスポーツ事業を行うほか、アスリートとしての学びをまとめた近著『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を通じて、人間の熟達について探求する。その他、主な著作は『Winning Alone』『諦める力』など。

 

 

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