AI時代にこそ求められる人間のリアルな感覚 子どもの非認知能力は外遊びで伸びる

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窪田:人間が立体に感じるのはある物体を右目で見た時と左目で見た時にそれぞれの目の網膜に投影される像が僅かにズレている(両眼視差)からです。この視差と目がどれだけ寄っているかという輻輳の感覚を統合して立体感を感じています。

しかし3D映像は、画面上では同じ距離にあるにもかかわらず、左右それぞれの目で別の映像をとらえることで立体的に見せる「視差」だけを利用して作られているので、自然な立体視とは異なるのです。

為末:かなり現実世界に近付いてきていると思っていましたが、人間の目のメカニズムで考えると、全然違うのですね。

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窪田:はい。VR酔いやAR酔いが起こるのも、脳に負荷がかかっているからです。3D映像では、リアルな世界で物を見ているときの眼の動き(輻輳)までは再現できていないので、不自然なものとして脳が認知してしまう。これはどんなに技術が進化しても解決できない問題です。

為末:おもしろいです。

窪田:だから、どんなにVRの世界が現実に近付いたとしても、視覚的にはリアルに体験することの重要性は変わらないと考えられています。視覚によって立体感を認知する力は、体をコントロールする能力にも関わります。

つまり、子どもの頃からリアルで複雑な視覚的体験を重ねておくことが、人の成長にとってとても重要だと言えるのです。

リアルとバーチャルでは教育効果に差が出る

為末:最近では幼少期からタブレットを使った教育も進んでいます。目への影響はありますか?

窪田:見てはいけないわけではありませんが、長時間にわたってテレビやタブレットのような平面のモニターだけを見続けているのは、目の成長には悪影響です。目のことを考えると、やはり外に出て、遠くのものを見ることが大事です。

為末:そうなんですね。コロナ禍を経てリモートワークが増えましたが、人とのコミュニケーションにおいても、対面とモニター越しでは違う気がします。

窪田:おっしゃる通りです。ワシントン大学で教育学を研究している人が、こんな実験をしています。1歳の子どもに1年間、リアルとバーチャルで外国語を教えた場合の習得度の違いを検証したところ、なんと倍以上も差がついたそうです。リアルのほうが圧倒的に習得度は高くなる。

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