この文章が面白いのは、明確に「価値観の違う者は排除する」と書いてあること。実際、渋谷がそれまでとは異なり「若者の街」のイメージを獲得できたのは、そうしてファッショナブルな若者を集め、彼らの琴線に徹底的に響くような広告を街全体で演出してきたからだろう。
実は、渋谷は昔から「選択と集中」をし続けてきた街だったのだ。渋谷が「みんなの街」だったことなんてないのだ。
その意味では、現在の渋谷の変化は「選択と集中」のターゲットが「若者」から「ビジネスパーソン・インバウンド」へとシフトチェンジしているにすぎない。
「選択と集中」は都市に「にぎわい」をもたらす
私が都市における「選択と集中」について思っているのは、「選択と集中」がうまく進んだ都市なり場所はにぎわいが生まれる、ということだ。
渋谷がかつて「若者」を選択して街としてのにぎわいが生まれたように、確かに現状のインバウンドに「選択」した渋谷の街も、その来訪客数を見ていれば、ある程度の成功は収めているように感じられる。
というよりも、さまざまな商業施設が生まれ、ネットの普及によってそれらの比較検討が容易になった時代において、顧客はより自分自身の好みに合う都市なり施設を利用するようになる。だからこそ、特定の層に向けて「選択と集中」された場所でなければ、生き残りは難しいかもしれない。
時代の変化にとって、こうした変化は必然的なことだともいえる。
実は筆者は、こうした都市や観光地における「選択と集中」の高まりを「ニセコ化」と呼び、2025年1月に上梓する『ニセコ化するニッポン』(KADOKAWA)という書籍でそれが全国的に広がりを見せていることを書いた。
北海道のスキーリゾート「ニセコ」では、外国人富裕層客に向けたサービスや街並みの「選択と集中」が行われ、それが評判を呼んでいる。そこを訪れる外国人観光客は増え続け、2023年度は過去最多を記録。明らかに、観光地として成功している。


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