ちなみに、どの材料を使うにしても「酢酸発酵」させたものを「醸造酢」といいます。いま市場に出回っているものの多くは、この「醸造酢」です。
「醸造酢」に対して、「酢酸発酵」を経ない「合成酢」というのがありますが、家庭用としてはほとんど出回っていません。
いま述べた「純米酢」も「穀物酢」も、どちらも「醸造酢」です。
「醸造酢」の原料としては穀物だけでなく、果実、アルコールなども使われます。
あるいはこれらを混ぜ合わされたものもあります。簡単に言えば、原料は何でも、発酵させたら「醸造酢」なのです。
コンビニのポテトサラダなど、マヨネーズを使ったサラダに「アレルゲン」として「りんご」と書かれていることがあります。
これはみなさん不思議に思うようで「なぜりんごが使われているのですか?」と聞かれることがよくあります。
これはマヨネーズの原料となる「醸造酢」の原料に、りんごが使われているからです。
もっと早く安価に作れる「アルコール酢」「速醸酢」
さて、昔ながらの伝統的な製法に対して、もっと早く作る方法があります。
「伝統的なお酢のつくり方」ではわざわざ米から酒を造りますが、「そんなことをしなくても、アルコールから直接お酢を作ればいい」という発想が浮かぶわけです。
つまりアルコールを買ってきて、そこに「酒粕」と「酢酸菌」を入れて、樽などで発酵させれば、手っ取り早くお酢ができるわけです。これを「アルコール酢」と呼びます。
さらに、これをもっと早く作るためには、ここに空気を送り込みながら強制撹拌(かくはん)して発酵を促します。これを「速醸法」と呼び、それで作られたお酢を「速醸酢」といいます。もちろん「アルコール酢」も「速醸酢」も、先ほど述べた「醸造酢」です。
「速醸法」だと3~5日でできるし、なんといっても非常に安価です。
しかし、この「アルコール酢」「速醸酢」は、風味のある日本酒を原料としないから、お酢のコクや風味がありません。鼻にツンときつさが来て、とげとげしい味がします。私に言わせれば、化学物質である「酢酸」そのものに近い味です。
さらにいえば、「伝統的な製法」で作ると、4%程度の濃度(酸度)のお酢ができますが、「速醸法」で作ると10~15%という高濃度(酸度)のお酢ができます。
これを5%程度に薄めて製品にするため、さらに風味が飛んでしまうのです。
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