個人的には、稲葉浩志の回が特に強く印象に残った。白状すれば、私はB'zの熱心なリスナーではなかったため、『ultra soul』(2001年)のような、ハードでギンギンなサウンドの中でシャウトする人というイメージが強かった。
しかし、というか、だからこそ、NHKの窮屈なオフィス、こぢんまりとした編成の中で歌われる稲葉浩志のボーカルにシビれたのだ。
我々の多くが聴き馴染んだ「ハードギンギン稲葉浩志」よりも、多くが初めて聴くこととなる「オフィスこぢんまり稲葉浩志」のほうに、彼の底力がくっきり表れた気がしたのである。
そして、10月28日オンエアのくるり回。弦楽四重奏の加わった『ブレーメン』『奇跡』『ばらの花』に、不覚にも涙しそうになった。
そもそも私は、仕事柄、テレビの音楽番組は、今でもよく見ているつもりだ。しかしそんな中、『tiny desk concerts JAPAN』だけに強く惹かれるのはなぜだろう。
拡大する音楽市場を牽引する「ライブ」
博報堂DYグループコンテンツビジネスラボによる新刊『令和ヒットの方程式』(祥伝社新書)によれば、日本の音楽市場は拡大しており、2025年には9000億円規模に届きそうな勢いである。
問題はその内訳である。その中で半分以上の比率を占め、かつ21世紀に入って急拡大しているのが「コンサート」なのである。つまり音楽市場の大票田は、パッケージでもサブスクリプションでもなく、ライブなのだ。
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