そして面白いのは、(社会的)毛づくろいがスイッチとなって起こる仕組みだ。スイッチが入ると、幸福な気持ちにさせるホルモンであるエンドルフィンが分泌される。それが繰り返されることでその集団に貢献したいと思うようになり、関係性がさらに深まっていく。
共著者のダンバーは、こうした関係性の深さにもレイヤーがあり、集団規模5(支援集団)、15(シンパシー集団)、50(良好な関係の友人)、150(友人)で安定することを発見した。それをさまざまな実証データで裏付けていく。そこは本書の読みどころのひとつだ。
読者は自分を同心円状に取り囲む、規模の異なるいくつかの集団にダンバー数を当てはめ確認することだろう。
こうしたルールを前提として、本書は以下について展開していく。
マネジメントにとって最も重要な役割
マネジメントにとって、個と個との関係性が効果的に作用し、個の潜在能力が最大限に発揮できる社会環境をつくることが、最も重要な役割である。本書では、それを帰属意識、絆づくり、メディアとメッセージ、信頼の深さ、社会的空間・社会的時間の切り口で説明していく。
それらの中から、筆者が興味深いと感じた点をふたつだけ挙げよう。ひとつは職場をトライブ(部族)、ひらたく言えばコミュニティにせよとの指摘。
トライブでは共通の目印やシンボルを身に着け、ジャーゴン(社内用語)を話し、会社の創業物語を共有する。こうして形成される帰属意識が、共通の敵に対して一致団結して戦う姿勢を引き出し組織の効果性を高める……。なんだか昭和の会社を思い出さないだろうか。
もう一点は、身体的同調性の重視だ。
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