倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)

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たとえば、暗号通貨取引所を創設したサム・バンクマン=フリードは、犯罪的な手口で巨額の富を手にしましたが、今は投獄されています。彼の儲け方は利益創出の条件に違反していたから、幻想利益に終わったのです。

真の利益とは、金持ちになったら、自分の会社を通じて富を分配したり、蓄積した富を社会善に用いることです。蓄積するときにも、持続可能な方法か、それ以上の方法をとる。日本では再生方法について興味深い議論がなされていますよね。

悪い利益の考え方もある世界

名和:単に持続可能なだけでなく、プラスアルファの要素を持たせるのですね。

マルクス・ガブリエル
マルクス・ガブリエル 1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される(撮影:今井康一)

ガブリエル:そうです。単にものがあり続けるのではなく、進歩的な動きの中でスパイラル状に高めていく。それが真の利益です。

負の外部性については有名な議論がありますが、私は前向きに捉えて、正の外部性を内包させたいと思っています。企業が生み出す負の付随的損害を測定し、バランスシートに反映させるだけでは不十分です。

たとえば、企業が客観的に測定可能な形でよい行いをしたならば、減税することなどが考えられます。たまたま近隣の人々によいことをするのではなく、社内に客観的に測定可能な道徳善を実践できるエンジンがあるとしましょう。

これは正の外部性につながります。それで減税ができ、正しいことが行われる。それが真の利益であり、その活動に従事する社会民主主義的なインセンティブになるでしょう。

名和:ドイツや日本はそういう考え方を取り入れたとしても、一方で真の利益という概念がどこにもない国もあります。真の利益に対して悪い利益の考え方もある世界で、異なるゲームが展開される中で、私たちはどのように戦っていけばよいのでしょうか。

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