倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ガブリエル:倫理資本主義では、経済に関連する事実を突き止められるようになるので、たとえば、エネルギー問題を解決した人はきっと大金持ちになるでしょう。

イーロン・マスクは善人でないかもしれませんが、経済的に成功している理由の1つは、とりあえずEV(電気自動車)という倫理的製品を見出したからです。EVは完璧ではないし、マスクは経済の神や仏でもありません。けれども、倫理的な解決策を見つけたから大きな利益を手にしました。

彼の意図は、単に儲けることにあったかもしれませんが、彼の初期のプロダクト(ペイパル)でさえ、決済をシームレスにするなど倫理的側面があったから、あれだけ急成長を遂げたのです。こうしたメカニズムが倫理資本主義の中心にあります。

過去の資本主義を創造的に破壊する

名和高司
名和高司(なわ・たかし) 東京大学法学部卒業、三菱商事入社。ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得。マッキンゼーのディレクターの後、一橋大学教授。2022年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、味の素、デンソー、SOMPOホールディングスなどの社外取締役を歴任(撮影:今井康一)

名和:資本主義はイノベーションの原動力になります。ガブリエルさんはケインズよりも、ヨーゼフ・シュンペーターがお好きなのですね。このドイツの哲学者、社会思想家とでも呼ぶべき人物をどう思っていらっしゃいますか。シュンペーターの説くイノベーションを再評価すべきでしょうか。

ガブリエル:そのとおりです。資本主義について私が開眼した瞬間は、あるスイス人の同僚から、資本主義はシステムではないかもしれないと指摘されたときです。

誰もが資本主義は経済システムだと言っているのに、どういう意味なのかと聞き直すと、「シュンペーターを読みなさい」と言われました。それで彼の大著『資本主義・社会主義・民主主義』に立ち返ったのです。

名和:彼の最後の著作ですね。お話を聞きながら、私もそれが頭に浮かびました。

次ページ「真の利益」と「幻想利益」を分けるもの
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事