倫理資本主義の下でビジネスは成り立つのか? エシックス(倫理)と資本主義を考える(2)

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ガブリエル:経済学で有名なゲーム理論では悪役が常に勝つとされていて、数学的には間違いないようです。しかし、それに対する解決策として有名なのが法律です。悪役の問題で世界が崩壊することはありません。なぜなら、経済は法律や政治の領域から完全に切り離されて動くシステムではないからです。

国民国家を再評価する

グローバル化した経済でも同様です。グローバル・コーポレートファイナンスは法律から自由だという俗説もありますが、それはありえません。それでは私有財産制度がなくなってしまいます。何らかの法律の仕組みがなければ、市場は成り立ちません。

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グローバルな領域における悪役問題の解決策は、国民国家だと思います。その事実によって、私たちは保護主義に陥ることなく、経済を守る政策を運用することができます。それは保護主義ではなく、よい行いをする可能性を守ることです。テロリストなどの非自由主義的な手段とはまったく違います。

名和:倫理資本主義という新しい概念についてわかってきました。環境、政治、技術におけるいろいろな変化を考えると、私たちが倫理資本主義について真剣に考えなくてはならないことは明らかですね。

※第3回は、10月29日を予定しております。

(翻訳・構成:渡部典子)

マルクス・ガブリエル 哲学者、ボン大学教授

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Markus Gabriel

1980年生まれ。ボン大学、ハイデルベルク大学などで学び、史上最年少の29歳でボン大学の哲学科正教授に就任。同大学国際哲学センター長も務める。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新実在論」を提唱して世界的に注目される。著書に『なぜ世界は存在しないのか』『「私」は脳ではない』(ともに講談社)、『新実存主義』(岩波新書)などがある。

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名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授

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なわ・たかし / Takashi Nawa

1980年東京大学法学部卒業、三菱商事入社。90年ハーバード・ビジネススクールにてMBA取得(ベーカー・スカラー)。その後、約20年間、マッキンゼーのディレクターとしてコンサルティングに従事。10年より一橋大学教授。22年より現職。ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアのシニアアドバイザー、ファーストリテイリング、デンソー、味の素などの社外取締役を歴任。現在、SOMPOホールディングスの社外取締役、朝日新聞社の社外監査役など。著書に『パーパス経営』(東洋経済新報社)、『超進化経営』(日本経済新聞出版社)、『問題解決と価値創造の全技法』(ディスカヴァー21)などがある。

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