【川邊健太郎×田中邦裕】"不機嫌な上司"の弊害 「組織を腐らせる」管理職にならないためには

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LINEヤフー株式会社 川邊さん
(写真:桑原美樹)

組織は簡単に従来型の日本的文化に染まってしまう

田中:私も高専時代の寮生活で先輩たちから理不尽な扱いを受けた経験があるので、上下関係を押し付ける日本型組織の不条理さはよく知っています。だから18歳で起業した時は、すごくうれしかったんですよ。「誰も理不尽な思いをしなくて済むような、自由でフラットな会社が作れるぞ」と。

インターネットはすべての人に対して平等でオープンなテクノロジーであり、私はそのカルチャーが大好きで起業したので、自分の会社もインターネット的な社風にしたいと思ったんです。

ただ、会社が大きくなる過程で外部からたくさん人を採用したので、中には古い価値観を持つ人もいて、次第に組織が硬直化していきました。加えて先ほど話した通り、私自身も多忙すぎて不機嫌だった時期があり、起業時に思い描いたような会社はなかなか作れなかった。

だから10年ほど前に「自分が作りたかった会社を作る」という原点に戻る活動を始めて、自由でフラットな社風を実現するためのさまざまな施策を行なったんです。その成果か、今ではメディアなどでもさくらインターネットを「働きやすい会社」として取り上げていただくことが増えました。

過去の経験があるので、「放っておくと組織は簡単に従来型の日本的文化に染まってしまうのだ」と肝に銘じています。

さくらインターネット 田中邦裕さん
(写真:桑原美樹)

ーー不機嫌上司がもたらす代表的な弊害として人材の流出が挙がりましたが、他にエンジニアリング組織におけるデメリットとして考えられるものはありますか。

川邊クリエイティビティーは間違いなく低下するでしょう。みんなが自由な発想で意見を出し合うから新しいものや面白いものが生まれるのであって、不機嫌な上司がいると周囲も発言しにくくなり、ものづくりの力は下がります。

そしてもう1つは、重大事故のリスクが高まることです。

ITサービスに不具合や異変が起こった場合、その前段階にはヒヤリハットがあったはず。しかし現場のエンジニアがそれに気付いたとしても、「報告すると上司に怒られそう」「どうせ機嫌が悪くて聞いてもらえないだろう」と思って口をつぐんでしまったら、何の対策もとらないまま放置されて、最終的に大事故に至ることになります。

田中:まさに会社が傾きかけた頃のさくらインターネットがその状態でした。かなりのコストダウンをしたので人が減り、残った社員の業務負担が増えて、全員が不機嫌になっていった。足りない人手は派遣社員や契約社員で補いましたが、非正規の人たちは立場が弱いので、管理者である正社員が不機嫌だと怖くてネガティブな報告ができません。

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