旅客機と渡り鳥「への字」編隊の"共通点" 知れば知るほど面白い「航空力学」

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渡り鳥とジェット旅客機の共通点は?(写真は、翼端渦の発生を減らし、空気抵抗を小さくしてくれるウイングレット)

渡り鳥が長い距離を移動するとき、大きな「への字」を描いた編隊飛行をします。これは、なぜでしょうか?

渡り鳥は、決して遊びで編隊飛行している訳ではなく、空気抵抗をできるだけ小さくして長距離飛行を可能にするため、「へ」の字を描いています。「空気抵抗を小さくする」というと、自転車競技のように縦一列に並び、先頭を交代制にするのがいいようにも思えますが、空を飛ぶ場合は異なります。

なぜなら、「翼端渦」(よくたんうず、翼端から発生する渦)の影響で、後方では、空気抵抗が小さくなるどころか安定した飛行すらできないためです。

この翼端渦のエネルギーは非常に強く、その後方には強い乱気流が発生します。数分前に通過した飛行機でも、その後流に入ると、激しく揺れる場合があります。拙著『カラー図解でわかる航空力学「超」入門』でも解説しておりますが、航空交通管制上特に離着陸時には危険なため、最大離陸重量により、

H(13.6トン以上)
M(7~13.6トン未満)
L(7トン以下)

 

という、3つの「後方乱気流区分」があり、区分ごとに後方乱気流を考慮した時間、または距離の間隔が設定されています。渡り鳥は、この後方乱気流を知っているので、縦一列に並んでは飛ばないのです。

では、なぜ「への字」編隊飛行なのでしょうか? それは翼端渦の影響を小さくするためです。

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