建設業の深刻すぎる「人手不足」解消に必要なこと 一括請負方式の生産システムを見直せるか

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さらに、在来木軸構法で自由設計された戸建て住宅を工務店などから受託生産する企業も登場している。2018年創業のウッドステーション(本田高浩代表取締役)は、ITを活用して住宅の躯体(スケルトン)部分を大型パネル化し工場生産することで、大工など技能労働者の現場作業を大幅に削減する工業化手法を開発。2023年からは住宅の内装(インフィル)部分の大工工事を最小限にして低価格化を図った「ハーフ住宅」の提供も開始した。

ウッドステーション「ハーフ住宅」内装(写真:筆者撮影)

同社に出資するYKK APの魚津彰社長は「これまでは大工工事を削減するメリットが価格に反映できていなかった」とみているが、今後、大工不足が進み、労務費が一段と上昇すれば、同社のプラットフォームを共同利用するメリットは高まっていくだろう。

マンション建設では、10年以上前から施工能力が高い長谷工コーポレーションに工事が集中する傾向が強まっている。住宅のリフォーム工事でも、2015年創業のトップリフォーム(永井良社長)が優秀な職人のネットワークを構築し、国際品質規格ISO9001を取得して、大和ハウスや積水ハウスなど大手ハウスメーカー、コメリなどのホームセンターなどからリフォーム工事を受託して事業規模を伸ばしている。

「建設キャリアアップシステム(CCUS)」がカギ

今後も建設技能労働者の減少が見込まれるなかで、物流のフィジカルインターネット(PI)がめざす輸送能力の共同利用を、建設分野でどのように実現していくか。

そのカギを握るのは、2019年に導入された「建設キャリアアップシステム(CCUS)」だろう。当初はなかなか普及が進まなかったが、2024年6月時点で146万人を超える技能者が登録し、3人に1人以上が利用するようになった。職種別の登録状況を見ると、とび職、鉄筋工、鉄骨工・橋梁工、型枠大工などは登録率100%を超えているが、大工は7.3%にとどまっている。

CCUSは、技能労働者の処遇改善を実現するためのツールとして民間事業者が費用を負担して導入された。ゼネコンの建設現場では入退場ゲートに顔認証システムを設置して、職人の就労状況を管理することも珍しくなくなった。住宅などの小規模現場での活用は進んでいなかったが、ここに来て当初はCCUSに消極的だった住宅業界でも登録する動きが出てきているという。

建設業界でも、技能労働者の情報がオープンになると、優秀な人材を引き抜かれるなどと懸念して、CCUSの利用に後ろ向きの声も少なくなかった。しかし、労働者不足が深刻化な地方の公共工事発注や災害復旧などではCCUSを、技能労働者を適正に配置するためのプラットフォームとして活用していくべきだ。さらにCCUSを活用しながら技能労働者を計画的に育成し、欧州のように技能労働者を相互利用していく仕組みを構築していくことも必要だろう。

今後、ますます深刻化していく建設業の人手不足をいかに解決していくのか――。その構想力が求められている。

千葉 利宏 ジャーナリスト

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ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

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