建設業の深刻すぎる「人手不足」解消に必要なこと 一括請負方式の生産システムを見直せるか
これまでもJMと類似したサービスはいくつも登場してきたが、成功した事例は少ない。その理由は、発注者側に「一括請負方式での工事発注は便利で手間がかからない」との意識が抜けず、新しいサービスを育てて上手く活用する戦略が欠けていたからではないかと筆者は考えている。物流分野で新たに導入されるCLOのような役割が「発注者」にも今後は求められるのではないか。
大工不足にどう対応していくのか
建設業では、サービスの共同利用にとってカギを握る標準化の取り組みも遅れている。日本の木造建築では「在来軸組工法」と呼ばれる標準工法が広く普及し、大工の多くが標準工法で育てられてきた。しかし、戦後の住宅不足でプレハブメーカーが続々と誕生し、各社が独自工法を開発。さらに米国の標準工法である「2×4工法」も導入され、工法が乱立する状況になった。
独自工法で住宅を建設するプレハブメーカーでは、積水ハウスが大工不足に対応するため、直接雇用で社員大工を育て始めているほか、旭化成ホームズでもつくば市の研修センターで大工の育成に力を入れるなどの対策を講じている。しかし、どの工法にも対応できる技能労働者を育成するのは、労働者側の負担が重いし、効率的とは言えないだろう。
大和ハウス工業では、住宅事業をテコ入れする柱として戸建て分譲事業の強化を図っているが、同社が得意とする鉄骨工法ではなく、在来軸組工法を採用することで外部の施工能力を活用していく戦略だ。子会社の大和ラスティックを通じて工務店などを協力業者に取り込むのに加え、在来軸組工法で住宅事業を展開する「オープンハウスグループなどに協力を要請した」(取締役常務執行役員 住宅事業本部長・永瀬俊哉氏)。
「グループ会社のオープンハウス・アーキテクト(OHA)に協力要請が来ているのは事実。前向きに検討している」(オープンハウスグループ広報)という。OHAは、ハウスビルダーのアサカワホームを2015年に連結子会社化してから社名変更。オープンハウスグループでは、年間約1万3000棟の住宅を販売しているが、うちOHAが約5300棟を供給している。
国内の新設住宅着工戸数は、戸建ての持ち家、分譲とも前年割れが続いている。人口減少に伴い、今後も戸数の減少が見込まれるだけに、事業規模を維持するために、製造業のOEM(相手先ブランドによる生産)のような手法が建設業でも広がっていくと考えられる。
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