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なぜ今、企業経営に「倫理」が求められるのか 「パーパス経営」の理想と現実をつなぐ判断軸

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  • 名和 高司 京都先端科学大学ビジネススクール教授、一橋ビジネススクール客員教授
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このようなプリンシプルが浸透していると、危機のときにも経営者自身が正しい判断を素早く下すことができる。1982年、全米を震撼させたタイレノール事件は、その象徴だ。

シカゴ近郊で、同社の解熱鎮痛剤タイレノールを服薬した人が、立て続けに7人死亡。当時のジェームズ・バーク社長は、直ちに出荷停止を決定。①を最優先するのであれば、当然の判断だった。

その後、調査の結果、出荷後に何者かが外部から薬物を注入した結果だと判明。危機においてもぶれない同社の姿勢は、高く評価された。最近の「紅麹問題」に対する小林製薬の後手後手の対応とは、雲泥の差である。

同社では、日本のガバナンス改革を牽引してきた学者が、筆頭社外取締役になっている。外面をいかに取り繕おうと、プリンシプルが浸透していないと、経営者自身が残念な判断に走ってしまう好例といえるだろう。

マッキンゼー「異議を唱える義務」

筆者が20年近く過ごしたマッキンゼー・アンド・カンパニーでは、100年前の創業以来、2つの「プリンシプル」(同社では「バリューズ」と呼ぶ)を大切にしてきている。「クライアントファースト(顧客第一)」と「オブリゲーション・トゥ・ディセント(異議を唱える義務)」だ。

プロフェッショナルファームであれば、1つ目は当たり前。一方、2つ目は出色だ。「異議を唱える」ことが「権利」ではなく「義務」であるという。そのためには、マッキンゼーの一員としての高い倫理意識と覚悟が必要となる。

しかも、この2つが二律背反を引き起こすことも、少なくない。そこでマッキンゼーでは、年に1回、「バリューズデイ」が開かれる。各事務所で全メンバーが集まって、丸一日かけて、プリンシプルについて徹底的に議論を尽くす。コンサルティングの現場で二律背反に直面したとき、いかに判断し、行動するかをグループでシミュレーションし、徹底的に討議し合う。

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【きれいごとの掛け声だけに終わるな】

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