なぜ今、企業経営に「倫理」が求められるのか 「パーパス経営」の理想と現実をつなぐ判断軸

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実務レベルでいえば、どの顧客層にフォーカスし、どの顧客層を切り捨てるのか、どの機能を内製し、どの機能を外注するのか、どの業務に注力し、どの業務は断捨離するのか――いずれも、現場レベルで、リスクを伴う正しい状況判断が求められる問いだ。

理想と現実、未来と現在には大きな乖離がある。パーパスを実践(プラクティス)するには、このギャップを埋める判断軸が求められる。そのような判断軸を、筆者は「プリンシプル(行動原理)」と呼ぶ。パーパスを日々のプラクティスに結びつけるためには、このプリンシプルの確立こそが、カギとなるのである。

(出所)名和高司『エシックス経営』p.19。
(出所)名和高司『エシックス経営』p.19。

プリンシプルは、次のような本質的な問いかけに対して、自問自答する際の判断基準となる。

・どのような価値を最優先するのか。
・何については妥協を許さないのか。
・決断する際に何に配慮すべきか。
・誰に対して、どのような責任を担うべきか。
・どのようなリスクに賭けるのか。

多くの企業には、「行動規範(Code of Conduct)」が整備されている。しかし、しっかり読みこなしている経営者や社員は、皆無と言ってよいだろう。もっとも、たとえ読みこなしたところで、ここに挙げたような本質的な問いへの答えは出てこない。

ルールからプリンシプルへ

近年、金融の分野では「ルールベースからプリンシプルベースへ」が世界的な潮流となっている。VUCA時代には、あらゆることを想定してルールで縛るより、各事業者がプリンシプルに従って正しく判断させるほうが、はるかに実効力があるからだ。

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