見た目で100%植物由来のナイロンとわかるわけではない。が、石油由来ではない素材開発に挑戦し、世界で初めて量産化に成功したというストーリーが伝わり、確かな成果を生み出しているのだ。
吉田カバンらしさは、そこにどう働いていたのかーー。4代目社長を務める吉田幸裕さんの話を聞いた。
「変わることで前に進む」
タンカーのリニューアルプロジェクトは、コロナ禍の2021年頃からスタートし、シリーズ40周年を前にし本質的な価値を考えようというところから始まった。「変わらずにいれば、いずれ衰退していく。変わることで前に進んでいくことを忘れてはいけないと思うのです」(吉田さん)。
過去においても、タンカーは、その時代が求めるものを取り入れ、仕様を変えてきた経緯があった。しかし今回は、コロナ禍による危機感が背中を押したところもあり、抜本的な改変をはかったのだ。
立てたコンセプトは「ALL NEW TANKER―何も変わらず、何もかもが変わる」――「5年後、10年後に振り返った時、正しい道を選択したと思えるよう、慎重かつ大胆に判断し、進めようと考えたのです」(吉田さん)。
それまで使っていたナイロンは、サステナビリティが重視される時代が求める方向と道を違えている。他の素材に変えられないかとリサーチを重ねた。東レが開発途上にあるナイロンと出会い、それを製品化して量産し、新しいタンカーを生み出そうとなったのだ。
吉田さんは1984年生まれ、40歳という若い社長だ。祖父である吉田吉蔵さんが創業した吉田カバンは、2代目が叔父、3代目が父、そして4代目を吉田さんが受け継いで4年目を迎えたという。
ファミリービジネスの4代目だから、幼い頃から「継ぐ」ことを意識していたのかと聞いたところ、「まったくありませんでした」ときっぱり――。柔道が好きで、何らかのかたちでスポーツにまつわる仕事に就こうと考えていた。
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