あの「ポーター」が人気商品を大胆に変えた裏側 価格2倍にしても素材変えた吉田カバンの挑戦

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長く使ってもらうために、製品の修理を受けているが、縫い目を丁寧にほどき、傷んだところを直し、再び縫い合わせる。新しいものを作るより手間がかかるケースもあるそうだが、欠かせない役割として続けている。「PORTER OMOTESANDO」のショップの一隅には、修理コーナーが設けられていて、職人さんが修理している様子を目の当たりにできる。

「一針入魂」は吉田カバンの社是ーー文言の通り「ひと針ひと針、魂を込めて縫わなくてはいけない」ということだが、その精神が、新製品から修理品までに行き渡っていることが伝わってくる。

表参道のショップの一角にある修理コーナー(写真:尾形文繁)

つないできたバトンを未来に渡していく

「僕は、恐らく、創業者の姿を目の当たりにした最後の社長なので、そもそもの志や、さまざまなエピソードを伝えていくのが、役割の1つととらえています」(吉田さん)。自分が体験したことにとどまらず、長い付き合いのある工場の職人さんや、取引先で耳にしたエピソードも含め、社内に伝えることを心がけている。

「吉田カバンとかかわってきた人がつないできたバトンを、未来に向けて渡していくことも、僕が担う大事な役割の1つととらえているのです」

ただ、歴史あるブランドを取材してつくづく感じるのは、創業時の志にはじまり、歴史の中で紡がれてきた挑戦の数々を知ると、そのブランドの奥行きを改めて知り、価値を感じるということ。逆に言えば、そこが伝わりきれていないブランドは無数にある。吉田カバンの未来へのバトンは力強いものになっていくだろうか。

川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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