佐野氏の「釈明」は、結局何がマズかったのか

不正の芽を摘むための「感情コントロール」

デザインの「パクリ疑惑」騒動の終わりは、まだ見えません(写真:田村翔/アフロスポーツ)

前回は、再生への歩みをスタートしたスカイマーク社員の方々がアンガーマネジメント研修を受講された事例を通して、逆境下において私たちがするべき振る舞いを考えました。

さて今回は、東京五輪公式エンブレムのデザインがベルギーの劇場のロゴなどに似ていると指摘された問題に端を発し、様々な過去の仕事について話題が及んでいるアートディレクターの佐野研二郎氏を取り上げます。会見や釈明文から、私たちが仕事に取り組む上で、常に折り合いをつけておきたい「不安」や「恐怖」への予防策について、アンガーマネジメント的な思考で検討します。

「毅然さ」から伝わる熱意

最初にお断りしておきたいのは、この記事が「佐野氏の仕事そのもの」について、盗用疑惑等の検証するような意図はまったくない、ということです。連載タイトルに示すとおり、「人生なぜかうまくいく」ために、世の中で起きている事象をアンガーマネジメント的にとらえ、状況を好転させるための技術対策を考えていこうという趣旨ですので、そうした視点でお読みくださいませ。

佐野氏が手掛けた東京五輪の公式エンブレムは、発表されるやいなや、ベルギー在住のデザイナーから「自身による劇場のロゴと驚くほど似ている」と指摘されたことがクローズアップされたり、スペインのデザイン事務所の作品とも形や色が非常に似ているなどと話題になったことから、一気に大騒動へと加速していきました。

これらを受け、8月5日に、佐野氏本人と大会組織委員会マーケティング局長の槙氏らが会見するに至った次第です。そこで佐野氏が語った言葉は、制作の経緯も、デザインへの思いも、実に毅然としたものでした。

「一つの核を見つけたいと思い、『T』に注目しました。このディド、ボドニという2つは広く使われている書体です。力強さと繊細さが両立している書体、このニュアンスを生かせないかと発想が始まりました」
「一人のデザイナーとして、日本人として誇りを持って作りました」
「アートデザイナーとして、物をパクることは一切ありません。自分の子供のようにデザインを育てているつもりなので、そういう声が出ることは寂しいです」
「ご質問に丁寧に答えていきたいと思います」

 

これらの発言からは率直に、誠実さや熱意が伝わってきます。また、私個人としては、向けられた疑義について、アンガーマネジメントのひとつの定義である「怒らなければいけないことには上手に怒る」ことを、まさに地で行ったような対応だと感じました。

次ページ会見についてはそれなりに評価できるが…
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