佐野氏の「釈明」は、結局何がマズかったのか 不正の芽を摘むための「感情コントロール」

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現に有識者たちからも非難の声が上がっており、中には、「小保方氏と同じ道を辿っている」という指摘をする人さえいます。この釈明の後に行われたあるアンケートでは、「トートバッグデザイン騒動は東京五輪エンブレムにも影響すると思うか?」という問いに対して、「影響すると思う」が96%、「影響すると思わない」が4%という結果も出ています。

すると、こうした状況に焦りを感じたのかと邪推されかねない関係者の証言が、8月26日に出ます。それは、エンブレムの審査委員代表を務めたグラフィックデザイナーの永井一正氏による、「佐野氏の原案は、劇場のロゴとは似ていなかった」というものです。

いわく、佐野氏の原案は「東京」の頭文字「T」を図案化したもので、ベルギーの劇場名の頭文字「L」を想起させる部分はなかった。その後、商標登録に向け大会組織委員会と佐野氏が協議し、他の商標との類似を避けるためデザインを練り直す中、最終的に「L」に似たデザインが盛り込まれたとのこと。28日には組織委の会見まで行われました。

どうすれば「不正」を防止できる?

これらは佐野氏の発言の信憑性をフォローするためのものと言えそうですし、今後も佐野氏のエンブレムのデザインを推していくための姿勢表明とも取れそうです。ただ今の状況から見て、はたして五輪開催までの5年間を乗り切ることができるか……という疑問も残ります。

個人レベルならば、「この騒動の責任をとって辞退し……」という潔さを示すことで、騒動の収束を図り、次なる機会をうかがう判断もできたのでしょう。ですが今回の騒動は、もはや佐野氏個人が意思決定できる仕事のレベルを超え、発展してしまったのかもしれません。

アンガーマネジメント的な対応としては、「不安要素の消去」に徹することで、イライラのもとから離れてしまい、新たな目標へ向かうためのリセットをすることが得策、としている面があります。けれども今回のケースは関係先が多く、状況対応には慎重な判断を要するのでしょう。

有識者から「小保方氏と同じ道を辿っている」という指摘があることを先述しましたが、(佐野氏の盗用疑惑を思案することとはまったく別問題で)一般的に起き得る業務上の捏造や不正について、その防止策を具体的に検討してみましょう。

程度の問題こそあれ、人は誰しも嘘をつきます。「人生で一度も嘘をついたことがない」という人を見つけ出すことは実に困難でしょう。

嘘をつく理由も様々です。肯定的にとらえられるものとしては、「相手に優しさを示すため」「他人の失敗を見逃すため」「敬愛する人の期待を裏切りたくないため」「そうした人から認めてもらいため」……といったことが思い浮かぶでしょうか。

つまりは、「お人好し」からの嘘をついてしまうことがあるのです。お人好しは、相手を喜ばせたいがために、ついつい虚偽の領域に踏み込んでしまい、その後、結局は自分自身が良心の呵責に苦しむことになります。

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