佐野氏の「釈明」は、結局何がマズかったのか 不正の芽を摘むための「感情コントロール」

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けれども、嘘をついてしまう回数が増えるにつれ、心の中でタガが外れ、不正を不正とも思わなくなってしまう瞬間があるのかもしれません。筆者が活動する社会保険労務士の業界では、最近以下のような同業者の「不正事件」が話題になりました。

○○県にある労働局は、昨年10月、社会保険労務士である容疑者が、助成金約5500万円の不正受給に関与していたとして、刑事告発していた。
逮捕容疑は、2011年ごろ、○○県内の△△事業の経営者と共謀。すでに雇用していた従業員を新たに試行雇用したと偽った申請書類を作成し、○○労働局からトライアル雇用奨励金12万円を詐取した疑い。

 

依頼主のために、12万円の助成金を受給決定させた社労士の成功報酬など、たかだか1~2万円程度です。普通に考えれば、たったそれだけの金額のために、逮捕されるリスクや、国家資格を棒に振るかもしれない覚悟ができるような不正ではありません。

「仕分け」で思考の基準軸を作る

この事件の背景にある真相など知る由もありませんが、もしかすると、不正に手を染め始めた頃は、依頼主のために尽力したいという気持ちが先行するあまり、断腸の思いで虚偽申請をしてしまった可能性もあります。

そして始めの頃は、罪悪感にさいなまれていたのかもしれません。けれど、いつしかそうした感覚も麻痺してしまって、気づいた頃には、5500万円という巨額の不正を重ね続けるに至った、という流れも考えられます。

もちろん、決して許されることではありませんが、お人好しが原因で不正を引き起こし、歯止めがきかずにエスカレートさせてしまったのだとしたら、あまりに憐れでお粗末な結末です。

ではそうならないために、私たちがアンガーマネジメントで「できること」を提案いたしましょう。以前の女子アナ内定取消訴訟の投稿でも記した、「怒ること」と「怒らないこと」を上手に仕分けるテクニックを応用してみてください。

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このハコに自分の対応を「仕分け」してみよう

今回の場合は、「自分が怒ること」の部分を「自分のお人好し的な対応(安請け合い)」に置き換えて考えるのです。

そのうえで、他者から求められたリクエストを、合法的かつ以後の精神衛生上よいかどうか、またその状況は、自ら「変えられる(コントロールできる)」のか、「変えられない(コントロールできない)」のか。それらを基準に仕分ける作業をして対応してみましょう。

こうした基準軸を一つしっかりと持っておくことが、のちのち自分が苦しむ状況に陥る愚考を防ぎます。せっかく仕事に対する熱意を持っているのに、感情コントロールができないばかりに常識的な判断力を麻痺させてしまっては、本末転倒です。他者から承認されることも大事ですが、いいように利用されて潰されることのないようにしましょう。

アンガーマネジメントに興味を持たれたかたは、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。

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