佐野氏の「釈明」は、結局何がマズかったのか

不正の芽を摘むための「感情コントロール」

これに続いて、組織委員会の槙局長は、商標権取得の流れについて説明しています。

「エンブレムの発表前に国際商標調査を行ったのはIOCとともに、組織委員会でございます。そのため、まずは組織委から『国際商標調査を済ませているので問題ない』というコメントを発表させていただきました。IOCと連携を取りながら、情報収集に入りました」
「国際的な商標は申請してから1年から1年半はかかります。先願主義というのがあり、7月23日に申請して、先願権は得ました。毎回、五輪では同じプロセスを踏んでいます」

 

なるほど、正式な手続きを重ねていることのアピールも忘れません。

これらのように、本人の強い意思を根拠と共に表明し、併せて法的な裏づけを示しながら、自らの正当性を主張する説明手法については、一定の合点がいくと考えます。

今般の問題と単純な比較はできませんが、前連載の最終回の投稿に記した、元兵庫県議・野々村竜太郎氏の「号泣会見」の様子とは、180度異なると言っていいでしょう。疑惑を向けられ、正当な抗弁ができない野々村議員は、「怒ればなんとかなる」といった万能感情の表出や、「自分の身を守るために泣き叫ぶ」といった防衛感情の暴走によって、自分の立場をより危うくする契機を作ってしまいました。

また、上西小百合議員の釈明会見についての投稿に記したような、野々村議員のように泣き叫びまではしないものの、記事に対してストレートに怒りをぶつけてしまうことで、言い方が冷静さを欠き、己の未熟さを露呈しまったようなケースとも、明らかに一線を画しています。

これらのように、8月5日の佐野氏らの会見については、それなりの評価が得られたのではないでしょうか。

 一転、「わだかまり」を感じさせる釈明に

ところが、状況は一変します。その原因は、サントリー・オールフリーのキャンペーンに使用されていた佐野氏デザインのトートバッグ30種類の中の複数が、別のデザイナーによってすでに発表されていたデザインと類似しているという疑惑。8月5日のエンブレム会見終了後、わずか数日後に勃発した問題です。

これらを受け、8月13日にサントリーは30種類中8種類のトートバックを配布中止とし、謝罪をしました。これは「佐野氏側の依頼を受けてのこと」とされています。さらに、佐野氏は自らが運営する「MR_DESIGN」のホームページに釈明文を掲載しました。釈明文に書かれていた内容は、ざっくり以下のようなものです。

「(スタッフによって)第三者のデザインをトレースしたことが判明いたしました」
「今回の事態は、社内での連絡体制が上手く機能しておらず、私自身としてのプロの甘さ、スタッフ教育が不十分だったことに起因……」
「なお、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムについて、模倣は一切ないと断言したことに関しましては、先日の会見のとおり何も変わりはございません」

 

皆さんはどのように感じるでしょう? 私自身は。このメッセージからは「苦しさ」が伝わってくるように思いますし、わだかまりを感じてしまいます。少なくとも、万人が腑に落ちる声明とは言い難いでしょう。

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