こんな上品な幽霊なら、たまには出てきてほしい、と思う人もいるかもしれない。この幽霊は、「怪談牡丹燈籠」のお露と伝えられている。
恋い焦がれる幽霊の美しさ
お露は根津清水谷に住む浪人の新三郎に恋焦がれて亡くなる。そして、やはり亡くなった女中のお米を伴い、カランコロンと下駄を鳴らして、夜な夜な新三郎のもとを訪れる。とりつかれた新三郎は日に日に痩せていき、ついには命を落としてしまう。1861年に落語家の三遊亭圓朝が作った怪談話だ。
「幽霊だけど、まったく怖さがない。徹底的にきれいに描いています。そもそもお露は恨みがあって出てくるのではなく、恋焦がれて出てくるタイプ。怖さより、絵として楽しめる作品になっています」
作者の鰭崎英朋は大の幽霊好きで、鏑木清方と肩を並べる人気の挿絵画家だった。
「誇張や芝居がかったことは排除し、できるだけ写生をして絵作りをする。やさしい雰囲気が彼の特長です」
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