そもそも幽霊は何のために出てくるのか? すべての幽霊が恨みから現れるわけではない。中には、ただ会いたくてやって来るものもいる。円山応挙(1733~1795年)の描く幽霊がその代表格だ。
ふっくらとした幽霊
切れ長の目にふっくらした頬、白装束に黒髪をたらしている。やせて骨と皮になった死者のようなイメージの幽霊は、もっと後の幕末から明治になって多くなるそうだ。
応挙の幽霊は、一説には中国の故事にちなむとされる。妻に先立たれて悲しみに暮れる漢の武帝が、「反魂香(はんごんこう)」という特別なお香を作らせた。香を焚いている間だけ、煙の中に亡くなった夫人が立ち現れる。
「幽霊でもいいから会いたい、という人に呼ばれて出てくる、見る側の願望によって生まれた幽霊です。だから怖くないし、恨みも持っていない。例えば、妻を亡くした人が応挙に幽霊画を注文し、床の間にかけて供養したということも考えられます」
円山応挙の幽霊画は、弟子たちが写したものが数多く出回り、幽霊画のひとつの型となった。
「〈応挙の幽霊〉というブランドのようになりました。もはや、どれが応挙の筆によるものなのか、わからなくなっています」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら