美しいほど怖い!生き霊になった女の「怨念」 「うらめしや展」の幽霊画はここが恐ろしい

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 最後に紹介する幽霊は、両手を前に出した、おなじみの幽霊スタイル。「東海道四谷怪談」のお岩さんだ。

あのお岩さんはこんな姿だった

《民谷伊右衛門 市川海老蔵 お岩亡霊 尾上菊五郎》歌川国芳 天保7(1836)年 大判錦絵

初産のあと、床に伏すことが多くなったお岩を、夫の伊右衛門は疎ましく思い、出世のために新たな妻を迎えようとたくらむ。毒を盛られたお岩は容貌が崩れ、苦しんで亡くなる。怨念から伊右衛門の前に現れたのがこの場面だ。赤ん坊を抱いたお岩と、おののく伊右衛門の間に赤い炎が燃え盛っている。

「東海道四谷怪談」は四世鶴屋南北が実話をもとに書いた芝居で、1825年に初演され大当たり。名場面が盛んに錦絵(浮世絵版画)に描かれた。

「海老蔵、菊五郎という役者名が入っています。役者が演じる幽霊が絵画化され、ひとつの幽霊画のパターンになりました」

 中でも、この歌川国芳の描く幽霊は人気があり、影響力も大きかったという。

 今回の展覧会は、東京・谷中の全生庵が所蔵する三遊亭圓朝の幽霊画コレクションを中心に、河鍋暁斎、伊藤晴雨、曾我蕭白らの作品が出品されている。

「怖がらせようと思って描いていると、雑になったり、絵が死んでしまったりする。そうではなく、画家が絵に何かを込めると、こちらは見入ってしまい、絵の世界に引きつけられて、心の中にまで入ってくる。そのほうが怖いんです」

夏休みが終わった初秋の上野でしっとりと幽霊に対面したい。9月から新たに展示される作品もある。

「うらめしや~、冥途のみやげ」展
―全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に―
開催中~9月13日
東京藝術大学大学美術館 地下2階展示室
東京都台東区上野公園12-8
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)
月曜休み
一般1100円、高校・大学生700円、中学生以下無料、ペアチケット2枚1組2000円


 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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