少年隊・東山紀之の自叙伝は何がすごいのか 原点を見つめなおし、新しい地平を開く

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東山少年は川崎に生まれた(写真:zafira / PIXTA)

本書『カワサキ・キッド』は「週刊朝日」2009年1月2・9日号から2010年4月16日号に連載されていた東山紀之さんの自伝的エッセイである。連載開始当初から「アイドルが赤裸々に思いを語る」と評判だった。当時どれどれと読んでみたら、あまりの面白さに驚いたのを覚えている。

バラエティ番組や情報番組などで何度か東山さんに会ったことはある。その印象はとにかくクール、パーフェクト、さわやか。立ち居振る舞いに一点の隙もない。さぞかし恵まれた人生を送ってきたのだろうとも思っていたが、その印象はいい意味で大きく裏切られた。一読して驚いた後は、もう続きが楽しみで楽しみで、このエッセイ読みたさに、毎週欠かさず週刊朝日を買うことになったのである。

褪せることない、最初の感動

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2010年に書き下ろしの一章を追加した単行本が発行され、5年経って今回文庫化された。久しぶりに再読して、初読のときに感じた感動があせることなく再び沸き起こった。

「この本は、ほんとうに、いい本だなあ」

何度本棚を整理しても、ずっと背表紙が見えるところに置いておきたい本だと、改めて感じたのだ。

“光化学スモッグでかすんだ校庭、「ヨイトマケ」の歌に出てくるような工場現場、コリアン・タウン、川崎大師、コンビナート、操車場、ソープランド、競馬場……。
東京とさほど離れていないのに、そこには東京とはまるで違う光景が広がっていた。
記憶のなかの川崎は、高度経済成長の日本の表と裏が凝縮されたような場所だった。”
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