平井一夫「仕事は自己を滅してするもの」は間違い 自分の人生はまず自分の中での優先順位を大切に
時代は大きく変わっていますから、あなたのご両親や上司が知っている成功法則が現代にも当てはまるとは限りません。それどころか、「失われた30年」を思うと、あなたのご両親や上司は、おそらくバブル崩壊後に社会人になった世代でしょう。
その間、日本経済はずっと停滞しているわけですから、そもそも自分たちなりの成功法則すら持ち合わせていない世代の人たちが、あなたの親となり上司となっている可能性が高いのです。
ともあれ、どうしたらうまくいくのかは、自分でいろいろなことを体験する中で確立していくしかない。だからこそ、自分というものをしっかり持っていなくてはいけません。
大切なのは自分の中の優先順位
何をしたいのか、何を大切にしたいのか、どう生きたいのか。仕事は自己を滅して従事するものだという考え方もありますが、私は反対です。ほかでもない自分の人生なのですから、まず自分の中での優先順位を大切にすべきでしょう。
他方、社会人になって数年の20代の人たちには「出世したくない」と考える人も多いようです。私としては、若い人たちには大いに仕事を楽しみ、成果を出して、将来的にはよきリーダーになっていってほしいので、もし「出世したくない」という傾向が強くなっているとしたら残念な話です。
とはいえ、若い人たちを責める気はまったくありません。なぜなら、もし「出世したくない」と考える若い人が増えているとしたら、それは若い人たち自身のせいではなく会社のマネジメント層のせいだからです。
そもそもなぜ、出世したくないのか。人は皆幸せを求めるものだと考えれば、答えは明らかです。出世を「自分の仕事人生の1つのゴール」として考えられない人が多いのだとしたら、その大きな理由の1つは「出世して幸せそうに見える人」を、ほとんど見たことがないからでしょう。
たとえば、「出世しても、ただ単に責任が重くなるだけ」「大変な仕事なのに、給料はほとんど上がらない」「部下の管理が大変」──日ごろ、こんな話ばかり聞かされていたら、「あの立場にはなりたくないな」と考えるようになっても不思議ではありません。
つまり若い人たちが「出世したい」「よきリーダーとなり、部下を率いて成果を上げたい」と思うかどうかは、リーダーの仕事内容から賃金面での処遇まで含め、そう思えるような環境や企業文化があるかどうかにかかっているわけです。そして、そんな環境や企業文化を作るのは、究極的には企業のトップです。
そうは言っても、現実にはひとたび会社に入ったら、基本的に、しばらくはそこで過ごすことになります。上司を選ぶことはできませんから、「ロールモデルとなるようなリーダーがいない」と文句を言っても始まりません。
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