地方は「好き嫌い」で物事を決めすぎる 「ゴマすりコンサルタント」採用も致命傷に

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では、こうした暴走を止めるにはどうしたらいいのでしょうか。そのためには、地域活性化のプランについて、定量的議論の機会と、柔軟性の確保について「初期段階」で確認するのが大切です。

どういうことでしょうか。人間が取り組むのだから、情緒性を完全に排除することは困難かもしれません。しかし、せめて論理的・定量的な議論を定期的に行うだけでも、かなり暴走は止められます。活性化にかかわる関係者が出すそれぞれの意見も、単に感想ではNGとし、数字をもとにした内容にするのです。また、出された意見も、数字で計算して検証してみれば、それが可能であるのか否かよくわかります。

例えば「図書館構想」を皆で議論してプランを練るとします。それを作るにはいくらの予算が必要で、維持費はどれだけかかるのか。1冊あたりの貸出コストはいくらで、1世帯あたりの負担はいくらなのか。施設維持費はいくらかかり、図書購入費はいくら程度になるのか。数字で見ていけば、議論の熟度は高まります。

このとき、勝手に情緒性を優先させて、希望的観測にもとづいて作為的な数字の作り方をしては全く意味がありません。ここはあえて批判的にやってみるというのが大切です。また、何事も一貫性よりも「柔軟性」を優先することを最初から確認しておくことです。初期段階から検討を進めていったほうが情報は集まり、分析も熟度が高まっていきますので、物事は変更されて当然なのです。

数字と向き合い、「群れないリーダー」を確保せよ

8月28日「地方創生サミット」を開催します。詳しくは、画像をクリックして下さい。

しかし「定期的に抜本的変更を加えること」を最初に宣言し、確認して進めないと、個々人の面子や人間関係を理由にしてズルズルと「初期の無理な計画」の検討が続けられてしまいかねません。そして「後戻り不可能なタイミング」に至ってしまい、「ここまできたらやってしまおう」、といったような話になって、トンデモ計画が実現されてしまうのです。

こうした「定量的議論」と「柔軟性確保」のルール化は、どんなに取り決めておいても煙たく思う人は少なくありません。このルールをその都度確認して進めることは、マネジャー(計画のまとめ役)にとって、非常に孤独な作業になることもしばしばです。逆にいえば、地域でのプロジェクトを率いていく人材には、その孤独と向き合うことが必要だと言えます。

情緒に任せ、内輪受けで盛り上がりながら、プロジェクトが失敗しても単に傷を舐め合うだけの「仲良しクラブ」では、真に地域を変えることはできないのです。

たとえ自分個人が損をしたとしても、ダメなものにはダメとストップをかけ、修正するべきものは修正する。それが本当に故郷を愛することではないでしょうか。

8月28日(金)「地方創生サミット」を開催(東洋経済新報社主催)します。地方創生に必要なのは「稼ぐ民の力」です。「食」「医療・福祉」「金融」「教育」などの分野で大活躍をしている、全国の実践者たちが集まります。私もたくさんお話しますので、ご興味のある方はぜひお越しください。
木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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