漂流するJVCケンウッド、止まらない縮小均衡
技術流出に加えて、元役員は今後のシェア低下を懸念する。「開発部隊を削りすぎた結果、新製品の発売サイクルが年1回に減りかねない。リストラで業績改善するのは一瞬だけだ」と怒りをあらわにする。
こうした一連のビクターの反発について、ケンウッド側は「リストラはわれわれも02年に経験したこと」と冷ややかに見守る。むしろ、「ケンウッドも生え抜き社長では再建プランを実現できなかった。河原さんはよくも悪くも時間をかけず、冷酷に改革を行って結果を出した」と評価する声が上がる。一方、ビクター側からは「壊したいだけ壊し、いっったい何がしたいのか。10年後の会社の姿を考えられる役員がいるのか」と怨嗟の声が渦巻く。
待遇などの統一は行われており、2社の垣根はなくなったと労働組合は口をそろえるが、両者にしこりが残ったことは否めない。
ケンウッドとビクターを経営危機から救ったのは、間違いなく河原の手腕である。しかし、今後の成長シナリオを描けていないことも事実だ。
話を再び、10月3日に戻そう。社内説明会での「We are the ケンウッド!」発言で、河原をとがめる者は出てこなかった。3年前なら激怒したであろうビクター出身の幹部社員の大半は会社を去り、残った社員には諦観ムードが漂う。今や河原は、絶対君主として圧倒的な存在感を放つようになった。
河原は現在72歳。5月に会長兼社長兼CEOから退き、代表取締役会長となった。本人は「若手幹部に経営を全面的に任せる」と若返りをアピールするが、実態は異なる。
過半の役員が外部出身 不動のワンマン体制
内部資料によると、社長兼CEOに就任した不破久温の権限は限られる。部長クラス未満の人事決定権や、5億円未満の借り入れ・貸し付けレベルだ。財務など大半の戦略は、取締役会と執行役員会を通す必要がある。重要案件については、「会長、社長が協議のうえ、会長が起案する」となっている。事業会社、関係会社の再編といった経営方針全般が会長の権限下にある。