漂流するJVCケンウッド、止まらない縮小均衡

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焼け野原の先に花は咲くのか

組織は末端まで「河原流」に染め上げられている。管理職は、「1段部長(事業部長)」「1・5段部長(統括部長)」「2段部長(事業部下の部長)」の3段階に区分けされている。これは東芝の人事システムに倣ったもので、「東芝が導入していたグループ経営のシステムを、独自に改善して取り込んだ」と河原は言う。だが、「会社が変われば中身も違う。そっくり東芝をまねる必要があるのか」と元役員は疑問を呈する。

若返りの掛け声とは裏腹に、河原のワンマン体制は不動のものとなっている。

河原は、「電機産業がもう一度バラ色に輝くことはない。アップルやグーグルのような新技術がJVCケンウッドから出てくるのは、根本的に無理」と断言する。カーエレクトロニクスと無線などの業務用分野で既存技術を応用し、台湾や中国のメーカーと競合しない分野で勝負する手堅い戦略を強調する。

そして自らの引退を見据え、「今後は別会社で、新技術を開発するベンチャー企業を支援したい」と語る。しかし、成長シナリオを描けるような新技術の開発は、今現在、河原が率いているJVCケンウッドにこそ必要とされているものだ。

3年を経て完全統合し、スタートした新会社の眼前には、再建の代償として焼け野原が広がっている。今後は、そこを耕し、種を植え、花を咲かせる作業が待っている。その作業を担う適任者は、外科手術とは異なる能力を持つ人物になるはずだ。

縮小均衡という負のスパイラルを断ち切り、成長軌道へ移行するために、新たな強いリーダーが求められている。=敬称略=

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(前田佳子 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2011年11月5日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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